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2011年9月14日 (水)

ストレステストが破壊的イノベーションをもたらす「プランB」を生む

4163744207 ジョン・マリンズ、ランディ・コミサー(山形 浩生訳) 「プランB 破壊的イノベーションの戦略」、文藝春秋(2011)

お奨め度:★★★★★

破壊的イノベーションを起こしたビジネスの多くは、最初の計画(プランA)がそのまま成功したわけではなく、プランAで失敗し、プランBに移っていく際のマネジメントに成功していることを多くの事例に基づき、主張した一冊。

 

この本で主張していることは、2つある。大成功をしたビジネスはプランAの失敗(あるいは、凡庸な成功)の中での試行錯誤のプロセスの中から、潜在能力を持つプランBを発見していること。もう一つは、そのプロセスは体系的に行うことが可能であるということだ。

体系的にプロセスを行うためには、以下の4つの要素が必要である。

(1)類似例
(2)反例
(3)未踏の信念を試す
(4)ダッシュ―ボード

まず、必要なのは、新しいアイデアではなくてもいいので、追及したいと思うようなアイデア。著者は、自分たちの推奨するプロセスの中で、もっとも基本的な構成要素は、起業家がいま、自分がやろうとしていることと多少なりとも似たものはすでに、ほかの人がやっている認識を持つことだという。これは基本であるとともも、プランBの特徴でもある。プランBが勝負だと言っているわけなので、プランAで追及するビジネスモデルは、他の企業のビジネスモデルを取り入れても構わないし、それによって自分がやろうとしているビジネスモデルへの理解が深まる。

そして、次に先行企業と明らかに違うものを選択している部分において、その意味を考えてみる。そこには、先行企業が成功しなかったということかもしれないし、新しいアイデアである可能性もある。

類似例と反例が見つかったら、自分の新規ビジネスについて、すでに分かっていることの一部はある程度の確信をもって結論を出せる。ただし、そのことはプランAを駄目にする要素ではない。プランAを駄目にするのは、まだわかっていないことである。そこで、類似例や反例から生じた疑問、信頼に値する類似例や反例がないような疑問を特定する必要がある。そのような疑問が、3つ目の要素、「未踏の信念(Leaps of faith)」へと導いてくれる。未踏の信念とは、それが現実に正しいという何の証拠もないにも関わらず、答えに確信をいだいていることである。

要するに仮説なのだが、単なる仮説ではなく、信念に基づくプライオリティを含んだ仮説である。類似例と反例を精査し、できるだけ早く未踏の信念を特定し、その信念が正しいかどうかを早く検証できると、プランAを進めていくか、プランBにブレークスルーするかの判断をできることになる。その意味で、未踏の信念を早く見つけることが極めて重要である。本書では、この主張を

・アップル社のPCからiPod+iTuneへの移行
・インドのバンタルーン(小売業)
・アフリカン・リーダーシップ・アカデミー

の3つの事例で紹介している。

4番目の要素は、「ダッシュボード」である。ダッシュボードは計画立案、実行、仮説検証から学んだ結果を記録するための、証拠の基づくプロセスを仕切るツールである。ダッシュボードには、

・自分の未踏の信念
・検証する仮説
・結果を評価するための指標
・一定期間以上の仮説テキストの結果
・得られた結果をもとに、決断のために導き出した洞察

が含まれている必要がある。

プランAから、プランBへブレークスルーするためにダッシュボードは以下の4つの役割を果たす。

(1)なぜ、うまく行かないかを費用をかけることなく検討するように仕向ける
(2)結果を評価できる仮説検定で、自分の未踏の信念をどう検証すべきかを厳密に検討するように仕向ける
(3)集めた証拠によって未踏の信念が反証された場合、プランAからプランBへの移行の必要性が一目瞭然に分かる
(4)他人にプランAからプランBに移る必要性を説明できる

ダッシュボードでプランAから、プランBへうまくドライブした例として、

・グローバルギビングのイーベイをヒントにしたインターネット慈善事業
・グーグル以上に便利な機能を提供しようとしたアグリゲート・ナレッジ

の2つについて、ダッシュボードを中心に紹介されている。

プランAの評価には、ビジネスモデルを5つの経済指標に注目することが有効である。

(1)売り上げを作る売り上げモデル
(2)行き詰まりを避ける粗利モデル
(3)改善でぜい肉を落とす運営モデル
(4)現金力をつける運転資金モデル
(5)お金がお金を生む投資モデル

本書の提案は、先に示した4つのプロセスと5つの経済モデルを一元化する、「ビジネスモデル・グリッド」を作り、その上で、プランAの評価と、Bへの方向性を発見することである。

本書では、それぞれに着目し、プランAからプランBへブレークスルーした例を相当詳しく紹介している。いずれも有名な会社ばかりなので、社名だけ紹介しておく。

(1)売り上げモデル
・グーグル
・シルバーグライド・サージカル・テクノロジーズ
・盛大インタラクティブ

(2)粗利モデル
・イーベイ
・トヨタ
・パタゴニア

(3)運営モデル
・ライアネアー
・オベロイ・ホテル
・ズーム・システム

(4)運転資金モデル
・ダウ・ジョーンズ
・コストコ

(5)投資モデル
・スカイプ
・ゴー社

ただし、現実は一つのモデルだけで、卓越したプランBを生み出すことは難しく、いくつかのビジネスモデルを組み合わせる必要がある。その例として

・ザラ(粗利、売り上げ、運転資金)
・アマゾン(運営、売り上げと粗利の複合)
・セルテル(売り上げ、あらり、運営、運転資金)

が紹介されている。

このように、本書では、ビジネスグリッドで方向性を決め、ダッシュボードでストレステストを行いながら、できるだけ早く、プランBを発見する方法と、その際の類似例と反例になるような豊富な事例を紹介している。起業家に参考になることはもちろんだが、新規事業においても、こういう体系的な方法はありそうでない。その意味で、新規事業をマネジメントする立場にある人にもお勧めの一冊である。

また、本書の解説は三分の一程度で、残りはすべてケースである。ケースブックとして、読むだけでもインスパイアされる本である。

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この本の書評を日経コンピュータの10月13日号に寄稿しました。

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