プロジェクトマネジメントの新しい「基本」を示す
好川哲人「プロジェクトマネジメントの基本」、日本実業出版社(2011)
アマゾンで買う
セブンネットで買う
楽天で買う
技術経営のコンサルタントが書いた新しいプロジェクトマネジメント「PM2.0」の基本を解説した一冊。経営オペレーションのマネジメントとしてのプロジェクトマネジメントについて、基本になることを体系的に書いた一冊。ビジネスリーダーにぜひ読んで欲しい一冊。
日本でプロジェクトマネジメントは注目されるようになってきて10年になるが、これまでプロジェクトマネジメントは、生産や開発などの現場のオペレーションのうち、非定型性の高いオペレーションのマネジメントを中心に活用されてきた。言い方を変えると、生産管理や品質管理の一環として活用されてきた。
しかし、これはプロジェクトマネジメントの一面に過ぎず、プロジェクトマネジメントにはもうひとつ、経営のさまざまなオペレーションのマネジメントという側面がある。言い換えると、戦略実行のマネジメントの手法である。
この場合、ポイントは、プロジェクト活動の企画の方法にある。本書では、経営活動の中で、プロジェクトをいかに活用するか、そして、そのためのどのようにプロジェクトを企画し、計画、コントロールすればよいかを体系的に説明している。
プロジェクトの企画は構想と立上げから構成される。構想では、経営ビジョンやミッションを意識しながら、戦略や経営方針に基づき、プロジェクトを定義していく方法が述べられている。
まず、プロジェクトの活用方法について、イノベーションを中心に論じている。具体的には、
①業務イノベーションプロジェクト
・開発プロジェクト
・重点課題解決プロジェクト
・設備投資プロジェクト
・業務推進プロジェクト
②機能イノベーションプロジェクト
・中期計画実行プロジェクト
・組織活性化プロジェクト
・制度開発プロジェクト
・業務システム開発プロジェクト
という区分に基づきプロジェクトの活用の仕方を以下の事例に基づき、説明している。
(1)ワークスタイル変革プロジェクト
(2)新商品開発プロジェクト
(3)IT投資
(4)営業革新プロジェクト
次に事例を使いながら、プロジェクトの目標決定の方法を説明している。
そこでは、プロジェクトの目的に対して、シナリオプラニングの手法を活用し、プロジェクトのシナリオを描き、シナリオからプロジェクトの目標を決定し、目標を実現するためのマネジメントプランを作ることを提案している。
さらに、目標をマネジメントプランを前提に、プロジェクト計画に落とし、実施している。実施に当たっては、初期計画ですべてを決めるのではなく、曖昧さを嫌がらず、プロジェクトの本来の姿であるローリングウェーブ計画法を活用してプロジェクトのコントロールをしていく方法を述べている。
経営のオペレーションとしてのプロジェクトを活用していくにあたっては、プロジェクトの構想が極めて大切である。ここでいうプロジェクトの構想は、ITのように生産型のプロジェクトであれば、提案に相当している。本書は、プロジェクトの企画の部分に三分の一の分量を割いている。
これらのマネジメントは、現場オペレーションとして考えれば、上位管理者が組織の立場で行って、プロジェクト目標にまで落とし込み、プロジェクトに渡す形になることが多い。これに対して、本書で述べられている方法は、プロジェクトスポンサーがプロジェクトマネジャーと協力しながら、プロジェクトの立場で組織の意図と読み取り、プロジェクトの目標を定義し、実現していくという方法である。いわゆる「組織的プロジェクトマネジメント」と呼ばれる考え方で、本書では、PM2.0と呼んでいる。
このようにアプローチが異なることを前提にすれば、本書に書かれていることは、「プロジェクトマネジメントの基本」の基本事項である。おそらく、現在、PMBOKなどに親しんでいる人が本書を見ると、PMBOKが前提知識になっていると感じると思うが、本書はPMBOKを前提にしていない。本書に書かれている範囲で、完結している。
もちろん、より高度なマネジメントをするためには、PMBOKの計画の手法や、コントロールの手法を取り込むことは意味があるが、必須ではない。むしろ本書の内容をまずは理解し、企画のプロセスの手法をいろいろと勉強する方がより意味があると思われる。
プロジェクトマネジメントへの関心が高まり、ビジネススタッフにPMBOK的なプロジェクトマネジメントのトレーニングを行っている企業がある。このような考え方は日本の企業には向かない。日本の企業の強みを活かすには、現場リーダーやミドルマネジャーに、現場のオペレーションだけではなく、もう少し、縦の幅を持たせ、戦略決定に寄与させるべきである。
それをプロジェクトとして行おうとしたときに、必要なスキルが完結にまとめられた一冊である。その意味で、とくに、MBAに興味のあるビジネスリーダーには参考になるだろう。
しかし、これはプロジェクトマネジメントの一面に過ぎず、プロジェクトマネジメントにはもうひとつ、経営のさまざまなオペレーションのマネジメントという側面がある。言い換えると、戦略実行のマネジメントの手法である。
この場合、ポイントは、プロジェクト活動の企画の方法にある。本書では、経営活動の中で、プロジェクトをいかに活用するか、そして、そのためのどのようにプロジェクトを企画し、計画、コントロールすればよいかを体系的に説明している。
プロジェクトの企画は構想と立上げから構成される。構想では、経営ビジョンやミッションを意識しながら、戦略や経営方針に基づき、プロジェクトを定義していく方法が述べられている。
まず、プロジェクトの活用方法について、イノベーションを中心に論じている。具体的には、
①業務イノベーションプロジェクト
・開発プロジェクト
・重点課題解決プロジェクト
・設備投資プロジェクト
・業務推進プロジェクト
②機能イノベーションプロジェクト
・中期計画実行プロジェクト
・組織活性化プロジェクト
・制度開発プロジェクト
・業務システム開発プロジェクト
という区分に基づきプロジェクトの活用の仕方を以下の事例に基づき、説明している。
(1)ワークスタイル変革プロジェクト
(2)新商品開発プロジェクト
(3)IT投資
(4)営業革新プロジェクト
次に事例を使いながら、プロジェクトの目標決定の方法を説明している。
そこでは、プロジェクトの目的に対して、シナリオプラニングの手法を活用し、プロジェクトのシナリオを描き、シナリオからプロジェクトの目標を決定し、目標を実現するためのマネジメントプランを作ることを提案している。
さらに、目標をマネジメントプランを前提に、プロジェクト計画に落とし、実施している。実施に当たっては、初期計画ですべてを決めるのではなく、曖昧さを嫌がらず、プロジェクトの本来の姿であるローリングウェーブ計画法を活用してプロジェクトのコントロールをしていく方法を述べている。
経営のオペレーションとしてのプロジェクトを活用していくにあたっては、プロジェクトの構想が極めて大切である。ここでいうプロジェクトの構想は、ITのように生産型のプロジェクトであれば、提案に相当している。本書は、プロジェクトの企画の部分に三分の一の分量を割いている。
これらのマネジメントは、現場オペレーションとして考えれば、上位管理者が組織の立場で行って、プロジェクト目標にまで落とし込み、プロジェクトに渡す形になることが多い。これに対して、本書で述べられている方法は、プロジェクトスポンサーがプロジェクトマネジャーと協力しながら、プロジェクトの立場で組織の意図と読み取り、プロジェクトの目標を定義し、実現していくという方法である。いわゆる「組織的プロジェクトマネジメント」と呼ばれる考え方で、本書では、PM2.0と呼んでいる。
このようにアプローチが異なることを前提にすれば、本書に書かれていることは、「プロジェクトマネジメントの基本」の基本事項である。おそらく、現在、PMBOKなどに親しんでいる人が本書を見ると、PMBOKが前提知識になっていると感じると思うが、本書はPMBOKを前提にしていない。本書に書かれている範囲で、完結している。
もちろん、より高度なマネジメントをするためには、PMBOKの計画の手法や、コントロールの手法を取り込むことは意味があるが、必須ではない。むしろ本書の内容をまずは理解し、企画のプロセスの手法をいろいろと勉強する方がより意味があると思われる。
プロジェクトマネジメントへの関心が高まり、ビジネススタッフにPMBOK的なプロジェクトマネジメントのトレーニングを行っている企業がある。このような考え方は日本の企業には向かない。日本の企業の強みを活かすには、現場リーダーやミドルマネジャーに、現場のオペレーションだけではなく、もう少し、縦の幅を持たせ、戦略決定に寄与させるべきである。
それをプロジェクトとして行おうとしたときに、必要なスキルが完結にまとめられた一冊である。その意味で、とくに、MBAに興味のあるビジネスリーダーには参考になるだろう。
なお、まえがきはこちらにあります。
コメント