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2010年8月13日 (金)

リセット!できるプレイヤーから、できるリーダーに!(書籍プレゼントあり)

4883999238 上村敏彦「即刻〈リセット〉したい5つのこと リーダーになってもデキる人 33のルール」、すばる舎(2010)

お奨め度:★★★★★

プレイヤーからリーダー(プレイングマネジャー)になるときに、失敗しがちな行動を避ける方法を経験に基づき、解説した本。一人でも部下ができたときに、ぜひ、手にとって読んでほしい一冊。

 

 

この本の根本的な問題意識は、優秀なプレイヤーがリーダーになったときに十分に力を発揮できず、成果を上げることができないという古くて新しい問題。基本的にはトランジションの問題である。

トランジションの理論を構築したのは、人材コンサルタントのウィリアム・ブリッジズ氏で、

第1段階……何かが終わる
第2段階……ニュートラルゾーン
第3段階……何かが始まる

の3ステップでトランジションが起こることを発見した。

すべてのトランジションは、何かが終わるところから始まる。新しいことを始めるためには、以前の古いことを終わらせる必要があるからだ。そして、ニュートラルゾーンは、どっちつかずの状態である。自分をとことん見つめ直す機会である。そして、ニュートラルゾーンを経験した後に、ようやく新しいことを始めることができるというものである。

ウィリアム・ブリッジズ(倉光 修、小林 哲郎訳)「トランジション―人生の転機」、創元社(1994)

トランジションが難しいのは、ニュートラルゾーンにおいて、一旦、終わったつもりだったのものが復活してくるからだ。これが優秀なプレイヤーがリーダーになったときに、うまく行かない理由である。この本は、プレイヤーをうまく終わることのできない原因を

・自分の役割
・メンバーの見方
・判断しすぎ
・任せられない
・トラブルに対するスタンス

の5つに絞り、プレイヤーとしてのそれをリセットし、ニュートラルゾーンで試行してみるべきことのヒントを与えている。

この本では、プレイヤーのキャリアと、リーダーのキャリアの違いを、個人で成果を出すことが重視されるプレイヤーと、

・チームで成果を出すこと
・トラブルに対応すること
・次のリーダーを育てること

の3つの仕事が求められるリーダーだとしている。これが議論の前提であり、リーダーとしてそのような仕事をするためには、上の5つのポイントをうまくリセットして、新しいことを始めることが重要だという。

まず、自分の役割のリセットでは、プレイヤーから、リーダーに役割の意識を変える。そのためには、

・「メンバーの見方」のリセット
・「判断しすぎ」のリセット
・「任せられない」のリセット
・「トラブルに対するスタンス」のリセット

が必要だという位置づけをしている。

メンバーの見方のリセットでは、メンバーの弱みを気にせず、強みに着目し、強みを活かすことをアドバイスし、また、チームにおいて、強みを活かし、弱みを無意味なものにするようなジョブアサインをすべきだとし、その中で、強みを活かすために弱みを克服することを指導していくべきだと指摘している。

さらに、チームにおいてそのようなフォーメーションをとることによって、お互いに学び合い、弱みが克服されていくことが期待できると述べている。

2番目の「判断しすぎ」は、いくらチームの生産性を上げても、リーダーが全部の仕事を見ているとチームの生産性はリーダーの生産性に依存するという問題意識。このような状況になるのを防ぐために、チームビルディングができてきたくらいから、「やってみせる」から、「させてみる」へフェーズを移すことの重要性を指摘している。

「させてみる」方法としては、目的と締切(目標)のみを与えて、手段を規定しないことだ。その際、プロセスがきちんと見えているかどうかを確認して、見えていない場合には段取りをつけさせ、確認することが必要である。また、トラブル対応の観点からは、収束イメージを持たせることが重要である。さらに、育成という視点からは、
・ものごとの構造を教える
・判断のパラメータを教える
の2点が重要であるという。

3番目の任せられないのリセットでは、「1回で良い結果を出す」ことのではなく、「数回やらせて良い結果を出す』という風に意識を切り替えること。そして、「挑戦→失敗→学ぶ」というサイクルを経験させることが重要だという。

ただし、このサイクルを回すには、メンバーのフォローアップが必須であり、そのためにはまず、自分の作業量を減らすこと。それでできた時間でメンバーのフォローを実践することだ。これは口でいうのは簡単だが、意外と難しい。判断がぶれるからだ。プレイングマネジャーが難しい理由でもある。しかし、著者は経験のためにも、「任せてトラブル」は絶対に必要なプロセスだという。

また、任せ方はメンバーのタイプによって分けるべきで、
・任せてバリバリタイプ
・寡黙なきっちりタイプ
・やりたがり暴走タイプ
・一人で抱え込みタイプ
・何でも相談、不安タイプ
・どこかで抜けているベテランタイプ
・まだまだヨチヨチ、ひよこタイプ
に分けて、任せ方、指導法を変えればよいということで、かなり具体的な管理方法が述べられている。

4番目は「トラブルに対するスタンス」をリセット。ここでは、
・予兆を掴むこと
・リスクを定石通りに管理すること
・トラブルの最適な着地点として、顧客に「ありがとう」といって貰うにはどうすればよいかを考えるコト
・常にゴールを顧客におくこと
などを上げている。

これ以外に、ニュートラルゾーンをうまく過ごすために、

・人脈を築く
・勉強する

ということで、具体的な方法を示している。


この本のすばらしいところは、ゴールを明確にした上で、その解決方法を提示していることだ。本だからといっても、押しつけるだけが能ではない。考えながら読ませる本というのもあってもよいし、曲がりなりにもリーダーになろうという人を対象にした本であれば、考えながら読む本の方がよい。

それにはもう一つの理由があり、この本に書いてあることは非常に明確で、体系的で、すっきりしているが、実行するのは並大抵のことではないことが多い。スキルが必要なわけではない。自分の今までの実績を忘れ、自分がやればできると思うことを人を使って実行するには勇気が必要である。勇気を振り絞るためには、自分の頭で考えた上で、著者のアドバイスを読み、自分の考えを強化するというプロセスは非常に有効だと思われる。問題の本質をよく考えた書き方である。著者のメンバーへの指導方法が目に見えるような本の書き方である。

ちなみに、「トランジション」の中で、ウィリアム・ブリッジズ氏は、ニュートラルゾーンを乗り切るために以下の6つのアクションをとるとよいと述べている。

(1)1人になれる特定の時間と場所を確保する
(2)ニュートラルゾーンの体験の記録を付ける
(3)自叙伝を書くために、ひと休みする
(4)この機会に、本当にやりたいことを見いだす
(5)もしいま死んだら、心残りは何かを考える
(6)数日間、あなたなりの通過儀礼を体験する

の6つだ。本書でアドバイスされている取り組みを行っていく中で、このようなことも考えて見るべきだろう。

本書を3名の方にプレゼントします。締切は9月24日です。希望される方はこちらから

第71回書籍プレゼント 即刻〈リセット〉したい5つのこと

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