「ザ・ゴール」流プロジェクトマネジメントの強化書(書籍プレゼントあり)
西原 隆、栗山 潤「TOC/CCPM標準ハンドブック―クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント入門」、秀和システム(2010)
お奨め度:★★★★
エリヤフ・ゴールドラット博士の「ザ・ゴール」で知られる経営論TOCをプロジェクトマネジメントに応用した手法CCPM(クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント)のハンドブック。基本的な理論から、事例までわかりやすく解説してあり、CCPMの導入企業のプロジェクトリーダーがCCPMについてより深く知ることができる。また、プロジェクトがうまくいかなくて悩む企業の経営者やプロジェクトマネジャーにも有用な一冊。
本書は、プロジェクトマネジメントをより意味のあるものにするために
・何を変えるのか
・何に変えるのか
・どのように変えるのか
の3つの視点からCCPMを解説している。
まず、プロジェクト(マネジメント)の計画の問題として
・作業時間のばらつき
・化かし合いコミュニケーション
・安全余裕の増えすぎによるリードタイムの伸長
といった問題を指摘している。また、プロジェクト実行中の人間行動の問題として
・学生症候群
・悪いマルチタスキング
・早期完了の未報告
・パーキンソンの法則
・遅れの伝播
といった問題があると指摘している。さらに、進捗のチェックにおいては、いろいろな手法はあるものに、結局最後は勘と経験に頼っていると指摘。そして、問題の是正においては、プロジェクトリーダーは組織のジレンマに陥り、有効な対策が打てないという問題があることを指摘している。これらが変えなくてはならないことである。
これらを変えるのに問題に有効な方法がTOCに基づく、CCPMである。TOCには、さまざまな手法やフレームワークがあるが、すべて以下の3つの前提からなっている。
(1)組織には達成すべきゴールがある
(2)部分の合計は全体にならない
(3)組織の業績は、ごく少数の変数に制約されている(制約条件)
CCPMでは、この3つの前提をプロジェクト型業務に適用して得られたマネジメント手法である。具体的には
(1)組織には達成すべきゴールがある
・スループット
・投資の減少
・業務費用の減少
(2)部分の合計は全体にならない
・従属性と変動性からプロジェクトを守るためには余裕が必要である
・個々のタスクに余裕を入れても機能しない
(3)組織の業績は、ごく少数の変数に制約されている
・市場が制約条件
と捉える。そしてマネジメント手法としては
・納期前にバッファを集中配置するスケジューリング
・タスクではなく、バッファに注目したマネジメント
という原理を採用している。これが、何に変えるか、つまり、プロジェクトマネジメント変革の目標である。
そして、いよいよ、どのように変えるかである。ここで、TOCの改善の進め方をCCPMに適用する。
ステップ1:制約条件を見つける
ステップ2:制約条件を徹底活用する方針を決める
ステップ3:他のすべてをステップ2の決定に従属させる
ステップ4:制約条件を強化する
ステップ5:惰性に注意しならがステップ1に戻る
という5ステップである。これによって、CCPMでマネジメントを改善していく。
もっとも重要なのは、バッファマネジメントである。バッファマネジメントのメリットは
・進捗状況が一目でわかる
・開発期間を短縮できる
・計画の修正が簡単になる
・定量的な改善を実施することができる
といったところである。バッファマネジメントを展開したら、次は、制約条件の強化をする。この際には対立が生じる。あるいは、バッファマネジメントが不十分な場合にも同様の対立が生じる可能性がある。
そこで、TOCの思考プロセスを活用する。思考プロセスは、対立解消を行う方法で、プロジェクトのマネジメントで発生するコンフリクトを解消する。
このように、問題が起こっても解消できるわけであるが、同じ問題の再発は防ぐ必要があり、そのためには継続的な改善が行われる学習する組織を実現する必要がある。
さらに、本書では、CCPMの実践事例として
・ソラン(I企業)におけるマネジメント改革
・PFU(IT企業)における見える化
・製造業における製品開発へのCCPMの適用
・ビーイングにおけるITパッケージ開発におけるCCPMとアジャイル開発の融合
・五星(建設業)の設計業務へのCCPMの適用
といった事例を紹介している。
本書を3名の方にプレゼントします。締切は8月25日です。希望される方はこちらから
コメント