プロジェクトマネジメントとチームマネジメントのマリアージュ
石川 和幸「チームマネジメントがうまくいく成功のしかけ」、中経出版(2009)
お奨め度:★★★★1/2
チームマネジメントとプロジェクトマネジメント。相性がよさそうなのだが、実は、結構、取り合わせが難しい。プロジェクトマネジメントのライフサイクルと、チームのあり方について明確な関連付けがされていないためだ。
この背景にはチームマネジメントに対する位置づけがある。PMBOK(R)では、チームマネジメントはパフォーマンスマネジメントの手段であって、MUSTではない。スコープマネジメントの方法にもよるが、チームが形成されていなくでもできるように分担するのが計画するという仕事である。
しかし、この議論には見過ごしてはならない前提がある。
この本が
プロジェクトマネジメントは、本来、人間的な要素がかなりあるにもかかわらず、単なる経営工学の管理技術として矮小化されてしまっている
と指摘している点である。
つまり、プロジェクト作業から人間的な要素(属人的な要素)をすべて剥がし、誰がやってもできる計画を作ることができるというのがPMBOK(R)の考え方である(個人の能力のばらつきなどはあることは前提としているが、それはPERTなどの統計的な手法によって体系的に扱えることになっている)。
こういう前提に立つ限り、重要なのはプロセスマネジメントであり、チームマネジメントはMUSTではない。
これに対して、当然だが、そうでないという考え方もある。つまり、属人性はどこまでもついて回るという考え方だ。こうなると、プロセスマネジメントはあまり意味のないものになってくる。そして、プロセスマネジメントに変わってMUSTになるのがチームマネジメントである。
※もう少し、詳しい話は、こちらの記事を参考にして欲しい
「プロジェクトマネジメントをする」vs「プロジェクトをマネジメントする」
極端なことをいえば以上のような話になるのだが、現実には、プロジェクトマネジメントとチームマネジメントはどちらが主従ではなく、マリアージュすることが望ましい。そのマリアージュの方法を提案しているのがこの本である。
この本では、まずチームを
・期限のあるチーム(プロジェクト)
・固定的なチーム(部門組織)
に区別し、同じマネジメントではうまく行かないということを前提に話を展開している。それに当たって、チームのライフサイクルとして、
・立ち上げ
・地ならし
・巡航
・ラストスパート
という大変特色のある発展段階を提唱し、チームタイプ×発展段階でマネジメントの方法を提案している。
詳細は本書を読んでもらうとして、第2章で説明されているプロジェクトチームのマネジメントでは、プロジェクトマネジメントのアクティビティを発展段階に貼り付けている。これは非常に画期的なアイディアだと思う(っていうか、弊社も同じことをやっているので、肩入れしたいだけかもしれないが、少なくともこのアイディアを書いた初めての本だ)。
固定的なチームでは、いわゆるチームマネジメントの手法を貼り付けてフレームワークにしている。
本としてみれば、最初はPMOBOK型(本書では経営工学型と呼んでいる)のプロジェクトマネジメントの批判から始まり、だからチームマネジメントが必要だと言っている。その批判のポイントになっているところは、多くのプロジェクトマネジャーが頭を抱えているチームメンバーの育成の問題であると述べている。また、この他にもいくつかの問題と、チームのメリットを主張している。そして、それをチームマネジメントの仕組みに落とし込む方法というのを第4章に述べている。この章が、本当に両方のタイプのチームを対象にしたものになっているのかどうかがよくわからない。この点がやや、もやもやが残る。この点が惜しい。
しかし、それ以外は、非常によく考えられており、なおかつ、チェックリストなどのツールも紹介されている実践的な本である。
冒頭の述べた、属人性を切り離すことのできないプロジェクトをマネジメントしなくてはならない人にはお勧めの本だ。
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上の述べたように弊社のチームワークに基づくプロジェクトマネジメントはセミナーで展開している。こちら。どのようなライフサイクルプロセスを取っているかは、セミナーに参加してのお楽しみということで。。。
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【カリキュラム】
1.プロジェクトを成功させる5つの要因
2.プロジェクトのゴールを明確に、実現シナリオを考える
3.ステークホルダを見極め、理解する
4.期待をマネジメントし、成功を定義するドキュメントを作成する
5.プロジェクトの成果物とすべき仕事を明確にする
6.スケジュールを決める
7.プロジェクトを取り巻く脅威を最小化する
8.コストとスケジュールと品質のトレードオフを調整する
9.プロジェクトプランをドキュメント化する
10.基準を決め、進捗を計測する
11.パフォーマンスの高いチームを創る
12.ステークホルダとのコミュニケーションを良好に保つ
13.プロジェクトで学んだことを整理する
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