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2009年1月 1日 (木)

しなやかな自分になりたい人に

4837956300 サミュエル・スマイルズ(竹内均訳)「自助論」、三笠書房(2003)

お薦め度:★★★★1/2

この本は、もともと、「西国立志編」として1800年代に出版されたもの。福澤諭吉の『学問のすすめ』と並ぶベストセラーだったという説がある。学問のすすめは、「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」で有名な米国の独立宣言を引用し、人間の平等に学問の重要性を説いたものだが、自助論では、「天は自ら助くる者を助く」という言葉で有名なように独立自尊の精神を説いている。

現在、手に入るのはこれ。

4061585274 サミュエル・スマイルズ(中村 正直)「西国立志編」、講談社(1981)

「西国立志編」は読んだことはないが、目にしたことはある。ずいぶん難しいが、竹内均先生の訳されたこの本は、ずいぶん、平易な表現になっており、すっと心に入ってくる。

自助論が教える独立自尊には

・人生は自分の手でしか開けない(自助の精神)
・努力が苦でなくなる法
・人生の好機を行かす法
・意欲向上の前に壁はない
・自分の使命に燃えて生きる
・実務能力のない人に成功はない
・楽をするためには汗をかけ
・頭脳と心・体の効率のよい鍛え方
・人生の師、人生の友、人生の書をもて
・人格は一生通用する最高の宝だ

といったことである。古今のさまざまな偉人のエピソードを紹介しながら、説得力があり、飽きさせず、こころに染み入るような言葉が並ぶ。読めば心が洗われ、活力が沸いてくる。そんな読後感のあるすばらしい本である。

最後になったが、なぜ、読みたくなったかを述べておく。今年は不況の嵐が吹き荒れる1年になるだろう。不況というのが適切な状況なのかどうかも分からないような状況になる感じもする。

そんな中で何を信じれはよいか?自分である。「天は自ら助くる者を助く」。政治が悪い、企業が悪い、自己責任だという前に、せめて、サミュエル・スマイルズのいうことを実践したいなと思って、もう一度、読み直した。

この半年くらいをみていると、企業は硬いが、もろくなっている。立っていられる間はびくともしないが、とんでもない負荷がかかるとポキッと折れてしまう。そんな感じがする。理由は明確。米国流の価値観の浸透だ。日本流と米国流を比較し、よい、悪いという議論があるが、はっきりしているのは攻めている間は強いが、守りに回ると弱いということだ。これに対して日本流はやわらかいが、粘り強い。よい言い方をすればしなやかである。英語でいえばロバストという言葉があるが、これだ。

企業や社会がすぐに変わるとは思わない。きっと、米国が復活して、それを見て方向性を決め、同じ方向を目指すような気がする。それはそれで仕方ないが、そうであれば、せめて個人だけでもしなやかさを持っていたい。そんな思いに共感する人は、ぜひ、サミュエル・スマイルズを読んでみてほしい。

【目次】
1章 自助の精神―人生は“自分の手”でしか開けない!
2章 忍耐―努力が苦でなくなる法
3章 好機は二度ない―人生の転機を生かす力
4章 仕事―向上意欲の前にカベはない!
5章 意志と活力―自分の使命に燃えて生きる!
6章 時間の知恵―「実務能力」のない人に成功はない
7章 金の知恵―楽をするためには汗をかけ!
8章 自己修養―頭脳と心・体の効率のよい鍛えかた
9章 すばらしい出会い―人生の師・人生の友・人生の書
10章 信頼される人―人格は一生通用する最高の宝だ!

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