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2009年1月18日 (日)

今、日本のビジネスパースンにもっとも必要なもの

4569704352 高橋 宣行「真クリエイティブ体質 観察・洞察で磨く発想力」、PHP研究所(2008)

お奨め度:★★★★1/2

元博報堂の制作部長高橋宣行さんのクリエイティブワーク論。「感じる」が足らないというテーマで、現場で五感で考えることを基本にしたクリエイティブな活動のあり方を論じている。

最初は軽い気持ちで読んでいたのだが、150ページ足らずの本を読み終わる頃には、引き込まれてしまった。この話は企画の話にとどまらず、今、あらゆる分野で多くのビジネスパースンが忘れているものではないだろうかという想いがわいてきたため。

キーワードは五感、現場と観察、そして洞察である。物作りの現場では昔から五感で作れといわれてきた。ところが、NC工作機のようなツールが増えて、五感が過るんじられるようになってきた。たとえば、社長が超有名人になった岡野工業という会社がある。マスコミや書籍からは詳しいことはわからないが、五感を大切にしているのであのような物作りができていることは想像に難くない。

同じくらいすばらしい会社は日本の各地にあったように思うが、いつのまにか、消えてしまい、突出したという感じがする。

これは物作りの話だけではない。経営においても同じようなことが起こっている。先日、著書を紹介した國貞克則さんは、「財務3表一体理解法」4022731443という方法を提案されているが、こういうことが当たり前ではなくなってきた。財務諸表をみても何もわからない。赤字と黒字の違いはわかるとしても、微妙な数字の意味が読めない。さすがに帳面をつけていたらわかるとはいわないが、これも、物作りの現場で微妙な加減ができないのと本質的に同じ問題だろう。

こんな問題がビジネスの「現場」のあちこちで起こっている。現場の感覚がわからない。頭で考えて、五感は使わない。

高橋さんが提唱しているのは広告企画について

・ウォッチングで感性を磨く
・感じるトレーニングをする
・テーマウォッチング

といった五感による観察から、洞察を行い、それから何かを作りあげることで、この本ではそのためのいろいろな方法を提案している。

特に共感した主張をいくつか上げておく。まず、独創性が人間観察から生まれるという主張。今のビジネスマンにかけているのはこれではないかと思う。コミュニケーションのスキルとして人間の五感の観察というのは不可欠だが、頭だけでコミュニケーションしようとする人が多く、これがさまざまなビジネスのトラブルを引き起こしている。

これに関連して、情報や知識が観察によって知恵に変わるというのもその通りだと思う。これを高橋さんは「知識の現場化」と呼んでいる。

また、「私の仕事」にしろという主張も共感した。想いが強いから、仕事が単なる課題の解決だけではなく、自己表現の機会にもなる。そして、そのようなスタンスが五感を鋭くするし、独創性を生む。これもそのとおりだと思う。想いのない仕事で、いくら五感を使えといわれても、難しい。

逆に言えば、頭で仕事できるような仕事しかしていないことが一番の問題かもしれない。そこを解決するには別の発想が必要で、まさに、プロデュース能力が必要だということだろう。

佐々木 直彦「プロデュース能力 ビジョンを形にする問題解決の思考と行動」、日本能率協会マネジメントセンター(2008)

【目次】

序章 人間観察から生まれると広告も古さを感じません(感じてみてください。キャッチフレーズの中の観察・洞察の力
キャッチフレーズに見える人間観察(どう人間を描くか、プロの眼))
第1章 なぜ観察・洞察なのか ビジネスは人間でできている(市場は人間そのもの
いま生活者優先社会へ ほか)
第2章 ウォッチング発想 基礎編 ウォッチングで「クリエイティブ体質」づくり(真の「クリエイティブ体質」とは
なぜウォッチングが「クリエイティブ体質」を鍛えるのか ほか)
第3章 ウォッチング発想 実践編1 発想力を磨く「感じるトレーニング」(ウォッチング発想の実践
「一次情報」と「二次情報」のアプローチ ほか)
第4章 ウォッチング発想 実践編2 テーマを持って「ウォッチング・ウォッチング」(アプローチ(C) コンビニウォッチング
アプローチ(D) デパートウォッチング ほか)

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