シンプルで、一貫した経営
小泉衛位子「経営の真髄」、日本経済新聞社(2008)
お奨め度:★★★★★
一貫性をテーマに、戦略経営の基本を説明した一冊。日本で一番最初に女性としてハーバードビジネススクールのMBAをとった著者がコンサルタントとして実践してきた方法の理論を分かりやすく紹介している。
この本で主張されているのは、あらゆるレベルのビジョンを整合させること。これを著者は「ビジネス・コンシステンシー」と呼んでいる。
もっとも大きなレベルでは、
【企業風土】 企業理念-戦略-戦略実施
のコンシステンシーである。
個々のマネジメントツールは著者の属していたボスコンで考案されたものではないかと思うし、今では、戦略の教科書に書いてあるようなものがほとんどである。その意味で、えっという感じの本ではないのだが、コンシステンシーを実現するための組み合わせと使い方はまさに経験に裏付けられたものであり、非常にシンプルである。
著者はボスコンから独立後の20年間で600件のケースを扱ってきたという。年間30件である。この数字はソリューションに強い信念をもって展開し、かつ、成功を収めてきたことの証だろう。そのノウハウを、60歳を迎える著者が、経営者や、プロフェッショナルとして経営に関与する人に提供するために書いた本で、その意味で、多くの人に読んでほしい本である。
方法そのものはシンプルであり、読めばできそうな気がするが、誰もができるものではないと思う。ある意味で、原理的な方法であるので、イレギュラーな問題が出てきたときに、どれだけこの方法を貫けるかという点が最大の焦点であろう。
間違っても、本をさっと読んで、まねをしようと思わないほうがよい。コンシステンシーを目標としている方法なので、全体を見通せないままで使うと火傷する可能性がある。活用するのであれば、しっかりと読み込んで、頭の中に入れ、自分のものとした上で活用することをお奨めする。
【目次】
1 成功への秘訣―ビジョンの重要性
2 ビジョン・目標の構築
3 戦略策定のポイント
4 ビジョン・目標・戦略を戦術レベルに展開するには
5 ビジョン・目標・戦略を理解し、実施してもらえる組織づくり
チェックリスト あなたの会社の経営状態は?
【目次】
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