プロジェクトの原点に戻ろう
WISDOM@早稲田「大学は「プロジェクト」でこんなに変わる―アカデミック・アドミニストレーターの作法」、東洋経済新報社(2008)
お薦め度:★★★★
プロジェクトとは何だったのかを改めて思い出させてくれる一冊。早稲田大学で、さまざまな変革をプロジェクトとして行っていくために作られたプロジェクトマネジメントのテキストを書籍化した一冊。
本来、プロジェクトは「やりたい」ことを決め、チームメンバーをかき集め、予算を獲得し、プロジェクトチームを動かしながら、やりたいことを達成するものだ。
ところが、どうも最近のプロジェクトというのはプロジェクトマネジメントということで仕事のやり方を規定され、「やらなくてはならないこと」を決められ、予算とスケジュールを与えられ、さらにはチームメンバーを与えられ、作業をさせられるという、やらされ感満載の仕事になってきている。おまけに、マネジメントそのものの意味すらよくわからないままに、標準として決められたマネジメントワークをぶつぶつ言いながらこなしている。ここにも、やらされ感がある。
そろそろ、このような状況を変えていく必要がある。
今、もっとも必要なことは、プロジェクトマネジメントありきではなく、想いありきでプロジェクトの目的を決めること、プロジェクトの目的ありきで、プロジェクトマネジメントを行うことだろう。
このことをじっくりと考えなおしてみるのにこの本は持ってこいである。実際に行われた、大学改革のプロジェクトを取り上げながら、
・どのようにやりたいこと(プロジェクトのテーマ)を見つけるか
・どのようにプロジェクトを立ち上げるか
・どのように仲間を巻き込むか
・どのように予算を確保するか
などをわかりやすくまとめている。ありそうで、今までになかった本。大学のことはよくわからないとしても決してひるむことはない。誰でもわかるように書いてある。
とくに、上に指摘した問題の中でも、意味もわからずにプロジェクトマネジメント標準に従って仕事をしている人には、専門用語を使わずにプロジェクトの運営を書いたこの本は、プロジェクトマネジメントの本質がわかるという意味でも、比類のないくらい役立つ本だといえよう。
この本で説明されているプロジェクトマネジメントのやり方を体系的にまとめている本がある。このブログでも何度か紹介しているトム・ピーターズの名著
トム・ピーターズ(仁平和夫訳)「トム・ピーターズのサラリーマン大逆襲作戦〈2〉セクシープロジェクトで差をつけろ! 」、阪急コミュニケーションズ(2000)
である。こちらは、かっこいいいプロジェクトを作るための50のハウツーを
・創造
・売り込み
・実行
・退場
の4つのフェーズに分けて整理した素晴らしい本。
元気がなくなるとこの本を読むと元気になる。プロジェクトってこんな素晴らしく、楽しいものだったんだということを思い出させる本だ。
【目次】
序章 なぜ、大学にプロジェクト型が必要なのか?
第1章 プロジェクトを始動させる
第2章 プロジェクト・チームを動かす
第3章 プロジェクトを展開させる
第4章 収束・解散から次世代育成へ
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