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2008年8月15日 (金)

型破りの企業改革物語

4478001669_2 吉川 廣和「壁を壊す」、ダイヤモンド社(2007)

お薦め度:★★★★1/2

DOWA(旧・同和鉱業、創業時は藤田組)の企業改革の進展を現会長の吉川廣和会長が自分の経営手法、経営哲学ととにも述べた1冊。

吉川会長は人事課長から社長まで登りつめ、今は会長を務めている。本書を読む限り、かなり、異色、型破りな経営者である。悪い本社からよい工場は生まれないという信念と持っているらしく、本社の徹底改革をする。その際、効率化、業務改善など考えずに、肥大化が問題なら物理的に小さくしてしまえということで本社スペースを6割にしてしまったそうだ。これ以外にもいろいろなエピソードが出てくるが、一貫しているので、人の可能性を信じていることだ。

吉川会長の考える人を活かす経営とは、壁を作らない経営である。壁には

・組織の壁(縦割り組織)
・階層の壁(役員と社員、現場と管理職)
・会社の壁(外から会社の中を見られないようにする)
・心の壁(利害関係、人間関係)
・風土・文化の壁(上記の複合)

などがあるという。このドキュメントには、これらの壁を如何に破っていったかが、エピソードとともに書かれている。たとえば、階層の壁を破る役員の抵抗にあって、休日に秘書室の物理的な壁をとってしまったなど、びっくりするような話がたくさん出てくる。

いろいろな企業の改革物語を読むと、象徴的な政策、言い換えれば、思い切った政策がひとつや二つはあるものだ。DOWAの改革はこの象徴的な政策だけで全体を組み立てているような感じ。

その背景にあるのが、吉川会長の経営哲学。これが型破りだ。その根底にあるのが、評論家(べき論)はいらない、当り前のことをやり抜くのが仕事だという信念。冒頭に述べた、「悪い本社からよい工場は生まれない」、「何をすべきかより、誰を乗せるかの方が重要」、「仕事を単純化して考える」、「効率化とは手抜きすること」、「会社は夢や生きがいなど与えられない」、「動機付けなど叫んでも無駄」、「トップの先見性など気にするな」などびっくりするような言葉が並ぶ。

たしかに、このような経営哲学に照らすと、課長時代から、社長になるまで取り組んできた改革は当たり前のことをやり抜いたに過ぎないのだろう。

いずれにしても、変革に携わる人に勇気を与えてくれる一冊。変革プロジェクトに参加する人は必読の一冊だ。

【目次】

序章 「壁を壊す」企業改革
第1章 破壊のはじまり?合理化への道
第2章 事業構造改革による、さらなる破壊?撤退、売却、そして再生へ
第3章 新しい会社へ?再生は「形づくり」から
第4章 徹底的に「開かれた会社」への転換
終章 壁破壊の改革から学んだこと

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