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2008年8月22日 (金)

「仕事を任せる」ための本

4904336070 トーマス・L・ブラウン(森理宇子監訳、柴田さとみ上坂 伸一訳)「 「権限委譲」で、抱え込んでる仕事を部下に任せる」、ファーストプレス(2008)

お薦め度:★★★★1/2

権限委譲は、リーダーシップやマネジメントの本では必ず出てくるが、本1冊権限委譲というのは珍しい。それも権限委譲による組織の活性化だとか、人材育成だとかそういう話ではなくて、100ページの親書に純粋に権限委譲のテクニカルスキルがまとめられている極めて実践的な本。

素晴らしいのは、ガイドラインが示されていること。ふたつみっつ紹介すると

・メンバー全員が責任を持って、チーム全体で一つの目標を目指すムードを作る
・単調な仕事や難しい仕事ばかりを部下に押し付けない。部下の興味を刺激するような面白みのあるを委任する
・スキルの足らない部下に対しても信頼の念を持って育てていこう

といったことが並んでおり、それぞれの具体的な実施方法が解説されている。

そもそも、仕事を任せるというのは、結構曖昧な概念だが、本書では一番最初にその定義をしている。いわく

ある人が別の人にタスク、あるいはプロジェクトを委任し、委任された人はその仕事を完成させることを約束する

ということだそうだ。ガイドラインを見ていると、日本式の仕事の方法は、ほとんどガイドラインに当てはまっているが、委任された人がきちんとコミットするという部分があまりきちんとした形でやられていないケースが目につく。なぜ、そんな中途半端なことになっているのかを説明するのが、本書で指摘されているマネジャー心理ではないかと思う。

つまり、仕事を任せたくないマネジャーの心理として、以下のものがあるというのだ。

1.部下にやらせるより自分がやった方が早いし、完成度も高い
2.仕事を任せることが自身のアイデンティティの危機をもたらす
3.任せる人へのライバル心
4.仕事のまかせ方は一から学ばなくてはならない新しいスキルであること

実務者は人に任せた瞬間にマネジャーになる。マネジャーになる覚悟のできない理由がこのような理由だ。ここを超えなくてはならない。

また、第2章には診断ツールと、任せるためのツールが掲載されている。これもたいへん、役立つ。まず、診断してみてほしい。

本書でも指摘しているように、優秀なマネジャーは例外なく人に任せるのがうまい。その意味で、優秀なマネジャーを目指す人には必読の一冊だ。

【目次】

第1章 仕事の任せ方―基本編(「仕事を任せる」とは何か?;効果的に仕事を任せるためのガイドライン;仕事を任せるための下準備;実際に仕事を依頼する ほか)
第2章 仕事のヒントとツール集(仕事の委任に役立つツール集;自己診断テスト;自己診断テストの正解と解説;よくある質問とその回答)

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