現場マネジャーが読むべき財務マネジメントの本
デイビッド・メッキン(國貞 克則訳)「財務マネジメントの基本と原則」、東洋経済新報社(2008)
お薦め度:★★★★★
現場マネジャーにも財務の知識は不可欠である。ただ、財務マネジメントには財務諸表で閉じた独特の世界があり、分かりにくく、近寄りがたい部分がある。その一因になっているのは、マネジメントや経営的な意思決定との関係が見えにくいということがあるように思う。
このため、専門家以外に役立つ本というのはなかなか見当たらない。そんな中で、非常に良い本が出た。
財務原則、マネジメント、意志決定を三位一体で理解しようと書かれた本。この3つを論理的に説明しているので、財務マネジメントがマネジメントやプロジェクトマネジメントにどのような影響を及ぼしているのかが非常によく分かる。かつ、入門書ではなく、深いことまで単純化して書かれているので、カバーしている範囲も広い。
現場マネジャーにとってはこんな本が欲しかったといえる本だろう。
この本では、まず、財務目標の設定の方法を述べている。利益とは何か、利益を上げるにはどうすればよいか、コンフリクトがあるときにどの数字が重要かを解説している。ここを読むとマネジメントの目標設定の考え方が見えてくる。
次のパートに、財務情報の活用で、ここでは財務諸表をどのように使うのかということと、財務諸表から会社の状況を分析する方法について述べている。
最後のパートは、財務コントロールで、コストのマネジメント、売り上げのマネジメント、利益のマネジメントの3つを、財務計画に従って行う方法を解説している。さらに、このパートでは、キャッシュフローのマネジメントや事業上の意思決定のマネジメントなどにも言及している。
そして最後がこの本の本領で、これらをどのように結び付けていくか、つまり、三位一体の明確な形としてのジャリリングを示している。この部部が特にお薦め!
この本1冊読めば、現場のマネジャーの財務知識としては十分なので、ぜひ、読んでほしい。
【目次】
第1章 本書の目的
第1部 財務目標の設定
第2章 利益がすべてか
第3章 どうすれば利益が出せるか
第4章 財務的な成果はどのように評価されるか
第5章 大切な数字はどれか
第2部 財務情報の活用
第6章 なぜ財務諸表を作成するのか
第7章 財務諸表から何がわかるのか
第8章 世の中の経済動向全般から何がわかるか
第9章 会社のマネジメントがうまく行われているかどうかを知るにはどうすればよいのか
第3部 財務のコントロール
第10章 財務計画はどのようにして立てるか
第11章 費用をどのようにしてマネジメントするか
第12章 売り上げをどのようにしてマネジメントするか
第13章 利益をどのようにしてマネジメントするか
第14章 キャッシュフローについて
第15章 キャッシュフローをどのようにマネジメントするか
第16章 長期的な事業計画について
第17章 長期的な事業計画に対する意思決定をどのように行うか
第4部 まとめ
第18章 断片をどのようにつなぎ合わせるか
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