ワークショップを極める!
ワークショップは、「作業場」や「工房」を意味する語であるが、20世紀に入ってからは体験型の講座の意味で用いられるようになってきた。
この意味でのワークショップは「主体的な参加」し、「自発的に作業」することによる「体験の共有」に大きな特徴がある。この特徴ゆえに、
・合意形成
・問題解決
・教育学習
など、さまざまな分野でつかわれている。今では、企業やトレーニングの中で普通に用いられる手法になっている。
ワークショップは誰でもできる。日本には古くから合意形成や問題解決において地域でも企業でも、「寄り合い」や「QCサークル」など、参加型のやり方をしてきた。一方で、やり方によってその成果が大きく変わる。この点をまず、よく認識しておく必要がある。
ワークショップの機会がこれだけ増えてくると、コンサルタントやファシリテータなどに特定のスキルではなく、すべてのリーダーのスキルだといえる。
ということで、この記事では、ワークショップの本を紹介したい。まず、まっさきに紹介したいのは、2002年に出版されたロバート・チェンバースの本である。ワークショップという言葉がだんだん注目されだしたころに、体系的に学びたいと思って読んだ本で、大変役に立った。
Participatory Workshops: A Sourcebook of 21 Sets of Ideas and Activities
この本は2004年に邦訳が出ている。
ロバート・チェンバース(野田直人訳)「参加型ワークショップ入門」、明石書店(2004)
この本の内容がよいかどうかといわれると、若干、疑問であるが、基本的なことが網羅的に書かれている。このため、僕のようにまずは基本を押さえて、そのあと、自分なりのスタイルを作っていきたいというニーズを持っている人には最もお薦めの本である。
ロバート・チェンバースの本は、基本的なことがしっかりと書いてあるが、ハウツー的な部分はあまり強くない。じゃあ、具体的にどうやるんだという部分は試行錯誤が伴うと思うが、そこを埋めてくれそうな本が最近、登場した。ファシリテーション・グラフィックスの堀公俊さんと加藤彰さんのコンビで書かれたこの本。
堀 公俊、加藤 彰「ワークショップデザイン――知をつむぐ対話の場づくり」、日本経済新聞社(2008)4532314038
この本は実際にワークショップを運用するとききに、どのような道具を使えばよいかことまで事細かに書いているので、とりあえず、本に書かれていることに従って、ワークショップを準備し、実施してみることができる。とりあえず、すぐに何かやらなくてはならない人にはお薦めである。また、ワークショッププログラムの事例紹介がアジェンダや活動紹介のレベルで17ケース紹介されているので、企画をするにも参考になるだろう。
さて、ではどうすれば成果がでるのか?という点についてこだわりを持つ人にお薦めの本がある。
中西 紹一、松田 朋春、紫牟田 伸子、宮脇 靖典「ワークショップ―偶然をデザインする技術」、宣伝会議(2006)
という本である。
サブタイトルにあるように、偶然をデザインするというのは、ワークショップの本質を言い当てている見事な言葉だが、この本はこのテーマで、ワークショップへの取り組みを解説している。ワークショップで成果を出すためのアイディアの宝庫なのだが、この本を役立てようと思うと、2つ条件がある。ひとつはワークショップの基本的な進め方を理解していること。二つ目は、書き方が抽象的なので、根気を持って読み、それを自分のワークショップの進め方に落としていこういう意欲を持っていること 。
この2つの条件をクリアでき、ワークショップで如何に成果を出すかという点にもっとも強い関心を持つ人にはこの本がお薦めである。
これは難しいという人には、分野ごとにある本を探すことをお薦めしたい。分野としては人権や開発などの社会問題が圧倒的に多いのだが、中にはこんな本もある。
エレン・ゴッテスディーナー(三島邦彦/前田卓雄/宗雅彦 、成田光彰訳)「要求開発ワークショップの進め方 ユーザー要求を引き出すファシリテーション」、日経BP社(2007)
この本は、システム開発において、ユーザの要求を引き出すためにワークショップを使うことを提案しており、テーマの設定、アジェンダ、具体的な方法など、具体的な内容を解説した一冊である。それから、もう一冊戦略構築のワークショップについて詳細な解説をした本を紹介する。
博報堂HOWプロジェクト「わかる!ビジネス・ワークショップ―「共創型」戦略構築プロセスが実行力を生む」、PHP研究所(2004)
である。こちらは、物語的にワークショップの進め方を説明して、そのあとで、体系的な解説をしている。変革などでワークショップを使いたいときにはたいへん参考になるだろう。
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