« WBSを極める | メイン | 顧客満足からディライトへ! »

2008年4月 1日 (火)

BMWができるワケ

4478082790 トーマス・アレン、グンター・ヘン(日揮株式会社監修、糀谷利雄、冨樫経廣訳)「知的創造の現場―プロジェクトハウスが組織と人を変革する」、ダイヤモンド社(2008)

お薦め度:★★★★★

なぜ、BMWはあんなに革新的で、ドライバーをわくわくさせ、美しい車を作れるのであろうか?著者もそのひとりであるが、こんな疑問を持っている人は多いと思う。

その答えがこの本の中にある。

この本は、組織内でのコミュニケーションパターンが、「組織構成」と「空間構成」の2つの相互作用によって決まるのではないかという仮説のもとに、MITスローンの教授で技術系組織のコミュニケーション手法を専門とする研究者トーマス・アレンと、ドイツの著名な建築家であるグンター・ヘンがコラボレーションした本。

この本の中心をなすのは「スパイン(背骨)」というコンセプトである。スパインは文字通り、背骨のような形をしたオープンスペースであり、ここで組織を超えたコミュニケーションが行われ、気づきが生まれ、イノベーションが起こる。

グンター・ヘンはBMWにスパインを応用したプロジェクトハウスを作った。BMWのプロジェクトハウスでは、スパインが垂直に立っているが、ここに試作車を置き、さまざまな活動の中心となり、プロジェクトにかかわる人々の流れや活動は自然とここに引き寄せられるような設計になっている。さらに、プロジェクトハウスの周辺部門からもブリッジを渡って参加でき、プロジェクトに参加できる(連絡調整、情報収集)。このようにして、他のプロジェクトや製品にかかわるメンバーとの出会いも生まれ、インスピレーションを誘発するコミュニケーションが生まれる。

この状況はトーマス・アレンが専門とするコミュニケーション手法を実現することになる。このように、建築(プロジェクトハウス)と組織構造を組み合わせることによって、高い成果が生まれることを具体的な事例を分析しながら、述べた本。

プロジェクトワークプレイスというのは重要であるという認識はあるが、せいぜい、コロケーション(同一場所でプロジェクト作業をする)くらいで、一方で、マトリクス組織のコンフリクトに悩むという図式がある。

そろそろ、こんなことを考えてみる時期に来ているのではないだろうか?BMWのような車を作りたければである。

ちなみに、京都に本社のある企業で、スパインコンセプトだと思われる研究所を作っている企業がある。組織構造やプロジェクトマネジメントがどうなっているかは知らないが、公開情報で知る限り、かなり、創造的な成果を上げているようだ。やはり、このコンセプトは一定の効果があるのだろう。

目次

Acknowledgments 謝辞
About the Authors 著者プロフィール
Introduction はじめに
1 Organization and Architecture 組織構成と空間構成
2 The Process of Innovation イノベーションを喚起するプロセス
Types of Communication コミュニケーションのタイプ
The Evolution of Organizational Structure 組織構成の進化
The Trumpet Model of the Product Development Process and Physical Space 製品開発プロセスの「トランペットモデル」と空間構成
3 The Flow of Communication in Space コミュニケーションの流れと空間構成
The Role Played by Physical Space 空間構成が果たす役割
The Configuration of Physical Space May Hinder Interaction コミュニケーションを妨げる空間構成の例
The Steelcase Example スチールケースの事例
The Corning Example コーニングの事例
4 Increasing Awareness さらなる「気づき」へ
Centers of Gravity and Awareness 「コミュニケーションの重心」と「気づき」
Influencing Centers of Gravity コミュニケーションの重心を近づけるには
Skoda Assembly Plant―Awareness of Quality シュコダの組立工場:クオリティー意識の向上
Technical University of Munich―Awareness of Learning ミュンヘン工科大学─学びの場と「気づき」
5 Two Management Tools Employed Together 2つの管理ツールの併用
The BMW Projekthaus in Munich BMWプロジェクトハウス(ミュンヘン)
Reflecting Back まとめ
翻訳後記

トラックバック

このページのトラックバックURL:
http://bb.lekumo.jp/t/trackback/605869/31150359

BMWができるワケを参照しているブログ:

コメント

コメントを投稿

PMstyle 2024年11月~2025年3月Zoom公開セミナー(★:開催決定)

アクセスランキング

カテゴリ

Powered by Six Apart

Powered by Google

  • スポンサーリンク
  • サイト内検索
    Google