イノベーションのウソ・ホント
Scott Berkun(村上雅章訳)「イノベーションの神話」、オライリー・ジャパン(2007)
お薦め度:★★★★
昨年出版されたプロジェクトマネジメントの本の中では群を抜いて面白く、昨年のベスト1に選んだ「アート・オブ・プロジェクトマネジメント」の著者Scott Berkunが独特の視点でイノベーションの陰に隠れた真実を引き出そうとした一冊である。
この本は以下のパターンで10の神話を取り上げている。
(1)イノベーションにまつわる神話を洗い出す
(2)なぜそれが有名になっているかを解説する
(3)真実という観点からそれを探求し、教訓とする
の3つである。要するに、一般的に言われている神話は必ずしも正しくないというのがこの本の趣旨だ。
神話として俎上に上げているのは
・ひらめきの神話
・私たちはイノベーションを理解している
・イノベーションを生み出す方法が存在する
・人は新しいアイディアを好む
・たった一人の発案者
・優れたアイディアは見つけづらい
・上司はイノベーションについてあなたより詳しい
・最も優れたアイディアが生き残る
・解決策こそが重要である
・イノベーションは常に良いものをもたらす
の10個。これをニュートンからグーグルまで引っ張り出してきた「小話」で説明し、また、反例を上げている。
「アート・オブ・プロジェクトマネジメント」ほど面白いとは思わなかった。何が違うのかなと思って考えてみたが、結局、このアンチテーゼの元になっている神話そのものが誰もが信じていることだけではないということに尽きるのだろう。僕の場合でいえば、このうちの8つくらいは反例を思いつくような神話だ。
その点は差し引いても、相変わらずアンチテーゼの視点や事例引用は鮮やかであるので、読んでいて刺激を受けることは間違いないし、イノベーション読本としては、間違いなく一級品である。
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目次
1章 ひらめきの神話
2章 神話:私たちはイノベーションの歴史を理解している
3章 神話:イノベーションを生み出す方法が存在する
4章 神話:人は新しいアイデアを好む
5章 神話:たった一人の発案者
6章 神話:優れたアイデアは見つけづらい
7章 神話:上司はイノベーションについてあなたより詳しい
8章 神話:最も優れたアイデアが生き残る
9章 神話:解決策こそが重要である
10章 神話:イノベーションは常に良いものをもたらす
付録 参考文献と参考資料
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