ヒトデかクモか
オリ・ブラフマン、ロッド・A・ベックストローム(糸井恵訳)「ヒトデはクモよりなぜ強い 21世紀はリーダーなき組織が勝つ」、日経BP社(2007)
お奨め度:★★★★
「本当に責任者のいない組織」が、どれだけ創造的で、従来の秩序を破壊し、経済的なインパクトを与えるのかについて述べた組織論。
著者は、このような組織をヒトデになぞらえ、その強さを事例としてeBayやSkypeなどのネット企業を通じて分析すると同時に、トヨタのマネジメントをその枠組みで分析し、日本型経営が目指す組織経営ではないかとしている。
日本型組織が責任のいない組織であり、ある意味でイノベーティブであるというのは経験的に正しいと思う。米国流の組織マネジメントのように、明確なガバナンスのもとに経営者から新入社員まで責任を分担するクモ的な組織運営は、実力のあるビジネスマンが集まる組織であれば合理性がある。それゆえに、自己責任による能力開発とセットになっている。
経営者は株主に対する短期のコミットメントが必要であり、社員も短期の業績評価が求められ、全ては経済的成果にベクトルが向けられる。しかし、これでは本当にイノベーティブなことはできない。もし、仮にこの本でいう「本当に責任者のいない組織」が存在可能であれば、イノベーションが生まれる可能性は多いだろう。一方で、この本で事例に書かれているトヨタを見ても、ガバナンスがないわけではない。どちらかというと、社員から見えない、あるいは意識しないようにされているだけだ。その意味で、この本に書かれているような単純な話でもないように思う。
その点も含めて示唆に富んだ一冊である。
目次
第1章 MGMの失敗とアパッチ族の謎
第2章 クモとヒトデとインターネットの最高責任者
第3章 ヒトデでいっぱいの海
第4章 5本足で立つ
第5章 触媒のもつ不思議な力
第6章 分権型組織と戦う
第7章 ハイブリッドな組織
第8章 スイートスポットを探して
第9章 新しい世界へ
コメント