成功事例で学ぶ顧客視点に立った成長
江口一海、矢野英二、木島研二、郷好文「顧客視点の成長シナリオ―モノづくりの原点」、ファーストプレス(2007)
お奨め度:★★★★1/2
顧客中心型経営手法を3つのコンセプトと事例を中心にしてまとめた一冊。
3つの活動コンセプトとは
・顧客価値の本質を実現する、顧客との接点を再編する活動
・顧客価値の本質にマッチする商品とサービスを提供する活動
・売り方と商品が実現する価値を顧客網上に構築する活動
の3つであり、序章では、この3つを、iPod、日亜LED発光ダイオード、キーエンス、デル、スターバックス、ユニクロ、アサヒビール、などのよく知られたベストプラクティスから導きだしている。
その後、第1部では、事例研究編として、コエンザイムQ10サプリメント、新幹線インバーター装置開発の2つのケーススタディでこの3つの活動コンセプトを分析している。
第2部は実践編ということで、この3つの活動コンセプトを実現するための事業モデル、成長シナリオについて提案している。
読みモノとしても面白いし、顧客価値の本質がどこにあるのか、自社のコンピタンスをその本質にあわせこんでいくにはどうすればよいのかについて多くの気付きを与えてくれるよい本である。
また、新幹線のインバーターの開発の事例はプロジェクトマネジメントの視点からも、顧客視点にたった場合に、トレードオフのマネジメントをどうするかといった重要な問題に対するたいへんよい答えになっているので、事業マネジャーだけではなく、プロジェクトマネジャーにとっても得るところの多い一冊である。
目次
はじめに----「顧客視点の成長シナリオ」への挑戦
序章 成長シナリオへの三つの活動コンセプト
1 成長企業に学ぶ成長シナリオ
2 第二の創業を実現する三つの活動コンセプト
3 1000m上空の視点から事業と環境を鳥瞰する
第1部 事例研究編
第1章 「コエンザイムQ10サプリメント」の成功事例に学ぶ
はじめに 経営成長の原点
1 現状分析
2 くやしくないのか!
3 「ならでは」の独自のポジションづくり
4 市場トレンド分析
5 商品コンセプトの刷新
6 売り方とSCMプロセス
7 三位一体サイクル
8 社員全員の意識覚醒と努力
第2章 「新幹線の高速化を支えたインバータ装置開発」の事例に学ぶ
はじめに 成長シナリオを実現する技術革新と商品開発
1 モノづくりをめぐる三つの視点と顧客ニーズ
2 社会インフラ製品に求められるもの
3 新技術開発における相反する課題
4 商品を変えるプロジェクトの発足
5 新商品が持つ、相反する課題と解決のポイント
6 顧客ニーズを実現する社内外連携
7 連携によるモノづくりのポイント
8 ようやく完成した1号機、そして量産に
第2部 実践編
第3章 顧客視点から考える事業モデル
1 いま何が起きているのか
2 この20年で、つくり手から買い手主義へ
3 企業のライフサイクルと第二の創業
4 顧客価値に基づく事業モデルの刷新
5 経営視点の価値の再統合
6 成長モデルの決め手は、顧客価値
7 顧客の視点で事業全体を評価
8 事業プロセスを見直す
9 顧客価値を設定する
10 成長し、勝てる事業モデル構築の全体関連
11 製造業の成長力を高める事業モデル
第4章 成長シナリオの構築
1 成長シナリオ構築の全体ステップ
2 ポジショニングとは「気づき」である
3 どこに向かい、何を強化すべきか
4 目的とやることの共有化
5 活動コンセプトづくり
6 成長シナリオ・ライティング
7 ステージアップ・プラン/実行計画の策定
参考資料 成長シナリオ・ベンチマーキング
おわりに----多くの企業戦士よ、出でよ
参考文献
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