なぜ、あなたは、自ら「重責」を負うのか
田坂 広志「なぜ、我々はマネジメントの道を歩むのか 人間の出会いが生み出す「最高のアート」」、PHP研究所(2007)
お奨め度:★★★★1/2
すべてのマネジャーに呼んでほしい素晴らしい本。田坂ワールドの集大成ともいえる一冊。
僕はビジネス書を読むときに、感情移入せずに読むように心がけているが、この本は、はやり、知識や意見として参考になるだけではなく、やはり、共感を覚える部分が極めて多い。
内容もさることながら、まずはタイトルが素晴らしい。田坂先生は自身著書で言霊のことを書かれていることからもわかるように、言葉をとても大切にされている方だ。
田坂 広志「経営者が語るべき「言霊」とは何か」、東洋経済新報社(2003)
この本のタイトルは、田坂流のマネジメントへの賛美だろう。むかし、細腕繁盛記という連続ドラマがあった。このドラマのオープニングのナレーションは「銭の花の色は清らかに白い。だが蕾は血がにじんだように赤く、その香りは汗の匂いがする」というナレーション。これも商売というものに対する賛美だと思うが、この田坂先生の言葉も同じようなニュアンスを感じる。
さて、この本では、「マネジメントの道を歩む方々へ」として、まず、以下のような問いかけから始まる。
「なぜ、あなたは、自ら「重責」を負うのか」
という問いかけから始まる。田坂先生の言われる重責とは「部下や社員の人生」であり、「部下の成長を支える覚悟」である。こんな苦しいのに、どうして、人はマネジメントの道を歩むかという問題提起で、マネジメントの素晴らしさを伝えようとしている一冊だ。
内容については先入観なくじっくり読んでほしいので、あまり書かない。一言でいえば、自分のキャリアを明確に意識し、キャリア発達を実現するためのマネジャーの道を歩む。そして、それは、コミュニケーションを通じて、部下の自立を促すことにより実現できるものだ。
非常によい言葉がちりばめられた本であるので、隙間時間で読むのではなく、まとまった時間をとって、噛みしめながら読んでほしい本だ。
この本を読んで、思い出した本がある。このブログでも紹介したことがあるが、ジョセフ・バダラッコの「決定的瞬間の思考法」だ。
ジョセフ・バダラッコ(金井寿宏、福嶋俊造訳)「「決定的瞬間」の思考法―キャリアとリーダーシップを磨くために」、東洋経済新報社(2004)
この本も、マネジャーが重責を担う中で、キャリアを変えかねない瞬間にどのような意思決定をすべきかをかいた本。この本も併せて読まれることをお奨めしたい。
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