強い個をベースとしたリーダー論
平尾誠二「人は誰もがリーダーである」、PHP研究所(2006)
お奨め度:★★★★
ミスターラグビー平尾誠二氏のリーダー論。
平尾流のリーダー論は、まず、「強い個」がベースになる。そのために、この本では、如何に自身を強くするは、また、指導者は如何に個を育成するかを議論している。
その上で、その強い個の上に立つリーダー像のキーワードとして、キャパシティというキーワードを使って議論している。キャパシティは、異質のもの、いびつなもの、対立するものを排除せずに、受け入れることだ。別の言葉でいえば、ダイバーシティである。
また、チーム論も展開している。平尾氏のチーム論はなかなか面白く、パズルではなく、積み木型のチームを創れと説いている。パズルはいうまでもなく、ぴったりとはまり、力を発揮するようなチームのイメージであるが、積み木型はでこぼこがあってもかまわない。30点のところもあれば、90点のところもあるが、全体として高くなる。そんなチームを創れと説いている。一種のコンペイトウ論である。バランスや効率は悪いが、その反面、予想しないような高い創造性を発揮する可能性もある。
基本的に平尾氏の発想は強い個、言い換えるとプロフェッショナルをベースにした議論である。その意味で人は誰もがリーダーである。ある意味で変わった理論であるが、少なくとも、大学選手権で3連覇を遂げた同志社の1年目のチーム、7連覇を遂げた神戸製鋼チームはそのようなチームだったと思う。その意味で、実践された論理でもある。
非常に興味深い。
目次
第1章 弱さを知って初めて「強い個」は生まれる(弱い自分と向き合う
「弱さ」は決して否定されるべきものではない ほか)
第2章 部下の弱さを克服させ、強さを生み出すリーダー力(「内発的モチベーション」と「外圧的モチベーション」
成功体験が内発的モチベーションを誘発する ほか)
第3章 人は生まれながらにしてリーダーである(キーワードは「キャパシティ」
大局的損得勘定を持て ほか)
第4章 強い組織は成熟した個人の集まりから生まれる(「パズル型」から「積み木型」のチームワークへ
「チームスポーツの個人化」が不足している日本 ほか)
第5章 個人と組織の力を最大限に活かす戦略とは(勝負の本質を的確に把握せよ
じつは神戸のペースだった三洋戦 ほか)
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