プログラムマネジメントに興味を持つ人の必読書!
桑嶋健一「不確実性のマネジメント 新薬創出のR&Dの「解」 」、日経BP社(2006)
お奨め度:★★★★
新薬開発の分野はプロジェクトマネジメントに対する関心が高いが、その理由がよく分かる本である。著者は大学の先生だが、よくフィールドワークをしていて、分析、提言とも実践的であり、実務家に有益である。
この本では、製薬会社の競争優位源泉を「go ro no-goの判断」だという仮説を設定し、武田薬品をはじめとする数社のベストプラクティスの調査をし、その仮説検証をしている。この分析の過程で判明したベストプラクティスはまさにプログラムマネジメントのベストプラクティスである。プログラムの中でポートフォリオを使って不確実性への対処をするという発想は、P2Mなどで提案されている手法である。
第4章の産業間の比較も非常に興味深い。問題解決モデルを作って、新薬開発のプラクティスで実施されていることを分析していいる。非常に合理的なプロセスになっていることが分かる。研究所としてみた場合には、(少なくともこの本にある書かれている範囲では)強引な結論を出しているという感じがするが、全体としては説得力があり、プログラムマネジメントの実践を知る上では、非常によい本である。
その意味で、製薬業界の方はもちろんだが、いろいろな業界の人が読む価値のある一冊である。
第1章
医薬品開発は「一攫千金」のビジネスか?
1.医薬品開発の一般的なイメージ
2.新薬とは何か?:本書の分析対象
3.医薬品開発の特徴とは?
4.研究開発プロセスの実際
5.まとめと本書の構成
第2章 画期的新薬はどのように開発されるのか?
1.二つの新薬開発物語
<ケース1>高脂血症治療薬「メバロチン」
<ケース2>アルツハイマー型痴呆治療薬「アリセプト」
2.新薬開発の成功要因を探る
3.探索段階のマネジメント可能性
4.「ゴミ箱モデル」が当てはまる探索段階
第3章 医薬品開発における競争優位の源泉は何か?
1.「go or no-goの判断」能力と競争優位
2.製薬企業の「go or no-goの判断」能力を比べる
3.「プロトコル・デザイン」能力と競争優位
4.組織能力の構築プロセス
第4章 優れた製品開発マネジメントの産業間比較
1.成功する製品開発マネジメントとは
2.「成功要因」の考え方・測り方
3.製品・産業により成功パターンは違うのか?
4.医薬品開発の特殊性を産業間比較から分析する
終章 研究開発戦略と企業戦略
1.本書で何を議論してきたのか
2 .企業戦略への示唆----研究開発戦略を超えて
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