Presence
ピーター・センゲ、オットー・シャーマー、ジョセフ・ジャウォースキー、ベティ・フラワーズ(野中郁次郎, 高遠 裕子訳)「出現する未来」、講談社(2006)
お奨め度:★★★★★
人格の成長を前提とした問題解決を行うU理論を中心にして、個人や企業の在り方を問う一冊。
久しぶりの5つ星。「The Fifth Discipline」(邦訳「最強組織の法則」)を書いた組織学習のグル ピーター・センゲの新著。15年前に「The Fifth Discipline」を最初に読んだときには、何かよく分からなかった。学習する組織には
システム思考(systems thinking)
自己マスタリー(personal mastery)
メンタル・モデルの克服(mental models)
共有ビジョン(shared vision)
チーム学習(team learning)
の5つのディシプリンが必要だという理論を目の前にして、一つ一つの要素の意味と、組織学習の関係はなんとなく分かるが、この5つといわれたときに、ピンとこなかったのをよく覚えている。その後、何度か読み直して、本当に分かったのは、守部信之氏による翻訳本を読んだときだった。これは一つには言葉の壁があった。例えば、masteryという言葉があるがこの言葉は日本語にはないと思う(ちなみに、この本のフィールドブックの翻訳者であるスコラコンサルティングの柴田氏は「自己実現」と訳されている)。しかし、今回の本は、日本語で読んでも難しい点がたくさんある。
この本の原著のタイトルは「Presence」である。たぶん、この言葉に適切に対応する日本語はないのではないかと思う。著者の野中先生と高遠さんは「出現する未来」という訳をつけられている。この訳はよく分かる。
今回の本は、「U理論」なる理論を提唱する本である。一言でいえば、自らが唱えているアクションラーニングについて書いた本であるが、この本の視座としては、学習には人間の生き方があるというものである。
U理論は仏教に基づく考え方で、二元論的な判断を中止し、全体を内省することによって、より正しい行動が直感的に生まれ、結果として自然に、素早くできるようになるという考え方。
具体的には、以下の3つのステップで構成される。
第1ステップ(Sensing):見るということを知る。
1.保留 - 習慣的な思考の流れから自分自身を切り離す
2.転換 - 生成過程に目を向ける
3.心の目でみる - 我執などを捨てること。これは presensing にもかかわる
第2ステップ(Presensing):プレゼンス
1.手放す - sensingにもかかる。
2.受容
3.結晶化 - 気づき(Mindfullness)が明確に現れること。これはrealizingにも関わる
第3ステップ(Realizing): 自然の力になる
1.目的の結晶化
2.プロトタイピング
3.システム化
前著もそうだが、この本はもっと深く考えないと理解できない。いよいよこの領域に入ってきたかという感じの一冊である。
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