第1感を大切に
マルコム・グラッドウェル(沢田博、阿部尚美訳)「第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい」、光文社(2006)
ジョナサン・スクーラーという心理学者は「言語による書き換え」という研究をしている。例えば、レストランに入って、接客してくれたウェイトレスを、警察で面通ししてくれといわれれば、ほとんどの人はできるだろう。しかし、レストランに入る前に、ウェイトレスの特徴を紙に書き留めて欲しいと言われていると、顔立ちとか、服とか、特徴に注目する。結果として、今度は警察で面通ししても識別できないことが多いという実験がある。このような現象を「言語による書き換え」とよび、精力的に研究している学者である。
彼の研究によると、論理的な思考が問題解決に大きな影響を与えることがあるそうだ。こんななぞなぞを考えてみて欲しい。
ある男性と彼の息子がひどい交通事故に巻き込まれ、男性は死んだ。息子は病院の緊急治療室に運ばれた。緊急治療室に入ってきた医者がその子を見て叫んだ。「うちの子だ」。さて、この医者は誰か?
有名ななぞなぞであるので、ご存知の方はご存知だと思う。医者=男という思い込みを捨てたらすぐに分かる。このような問題は論理性を問う問題ではないが、ここに紙と鉛筆を持ってきていろいろ考え出すと解けなくなる。これが「言語による書き換え」の弊害だ。
このように理屈だけでは解決できない問題が多いということを指摘した本である。このような例は、我々の仕事の中でも数多くある。特に、最近、MBAとか、PMとかで論理的思考が重視されるようになってきて、目立つようになってきた。
心理学的にいえば、「適応性無意識」というそうなのだが、そのような事例をたくさん書いてあるので、それを読むだけでも楽しい本だ。
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