トヨタウェイの実践
ジェフリー・K・ライカー(稲垣公夫訳)「ザ・トヨタウェイ 実践編 (上)」、日経BP社(2005)
ジェフリー・K・ライカー(稲垣公夫訳)「ザ・トヨタウェイ 実践編 (下) 」、日経BP社(2005)
お奨め度:★★★★
ジェフリー・K・ライカー教授の「ザ・トヨタウェイ」の実践編。トヨタウェイを実践するために必要なツール、手法、ノウハウについて詳細に解説されている。特に、暗黙知の部分が分析的に解説されており、大変、参考になる本である。
「ザ・トヨタウェイ」では、アメリカの製造業に「リーン生産方式」として多大な影響を与えたトヨタ生産方式をその事業哲学にまで遡って分析したしている。
この本ではトヨタ方式を導入しようとする場合にどのような問題が発生するかを、さまざまな視点から解説している。実際のところ、トヨタ生産方式を導入することは難しい。カンバンなどの表面的なプロセスを見ても、うまく行かないからだ。
その部分について言及している本は少なくないが、本書ほど、体系的かつ、実践的にその部分に切り込んでいる本はない。この1冊で、トヨタ生産方式が導入できるかどうかは微妙であるが、逆に、これ以上の情報は書籍の形では提供できないだろうと思われる1冊であることは間違いないだろう。
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目次
日本語版への序文 ジェフリー・K・ライカー
謝辞 デイビッド・マイヤー、ジェフリー・K・ライカー
まえがき ジョン・シュック
序文
第1部 トヨタから学ぶ
第1章 実践編を出版する背景
本書執筆の動機
本書の構成
トヨタウェイの原則の概要
本書の使い方
第2部 会社はなぜ存在するのか?
第2章 会社の目的を定義し、それに基づいた実践をはじめる
会社の思想は何ですか?
内部と外部から見た企業の目的意識
自社の思想を創り出す
自社の思想通りに生きる
社員やパートナー企業と社会契約を結ぶ
目的の連続性を保つ
第3部 会社全体にリーンプロセスを確立する
第3章 ムダ取りへの道のり
リーンはムダ取り
ムダ取りに関して長期的な哲学を確立する
価値の流れ図アプローチ
価値の流れ図手法の利点
現在状態図を作成する
目的を理解したうえで現在状態図を作成する
価値の流れ手法の限界
段階を追って流れをつくる
逐次的、同時進行的な継続的改善
第4章 最初に工程を安定させる
まず基本的な安定状態まで工程をもっていく
不安定性の指標
雲が晴れる
安定化の目的
安定化を生み出す方法
大きなムダを見つけて取り除く
円の中に立ち続ける訓練
大きなムダを見つけて取る分析ツールとしての標準作業
5Sと職場の整理整頓
複数のムダの活動を統合して効果を得る
作業の有効時間率を向上する
ばらつきは隔離することで減らす
80対20の法則
負荷の平準化で流れ化と標準化の基礎を築く
第5章 つながった工程の流れをつくる
一個流しが理想
なぜ流れをつくるのか
小さいことはいいことだーーつくり過ぎのムダを管理するムダ取り
つながった工程の流れをつくるために使われる戦略
一個流し
流れを達成するためのキーポイント
プル
複雑な流れの状況
カスタム製品製作環境におけるプル生産
離れた工程間でのプルのつくり方
流れ、プル、ムダの排除
第6章 標準化した工程や手順を確立する
標準化は強制的なものか?
標準作業か作業標準か
標準化の目的
標準化作業と手続きを設定するための戦略
標準化の種類
品質、安全、環境標準
標準仕様
標準手順
標準作業の神話
標準作業
標準作業の文書
標準作業設定の際に遭遇する問題点
標準作業の監査
継続的改善の基線としての標準作業
設計パラメーターとしてのタクトタイム
目で見る管理の重要性
標準化はムダを排除するツールである
第7章 平準化でウサギではなく亀のようになる
平準化のパラドックス
ヘイジュンカでリソース計画が標準化できる
なぜ、こんなことを自分に押し付けるのか?
上流工程の需要を平準化する
基本的な平準化計画の作成方法
さらに平準化する高度なヘイジュンカ
平準化の深化
管理ポイント
在庫管理の管理ポイント
平準化計画は補充を決定する
多品種の場合にはスライス・アンド・ダイス
平準化は企業全体の活動
第8章 ラインを止めて問題解決を図る文化をつくる
カルチャーの醸成
自働化とは、自己監視する設備
問題解決サイクル
停止時間を最小にする
検査をすべての作業に組み込む
ポカヨケ
サポート体制の構築
第9章 技術を人やリーンプロセスに合わせる
そろばんに逆戻り?
技術、人、プロセスに関して、信念は何ですか?
人や生産上の思想に合うように技術を選び、カスタマイズする
技術採用の対照的なモデル
技術の役割を過大視しない
第4部 卓越した人とパートナー企業を育てる
第10章 会社のシステムを上から下まで熟知しているリーダーを育てる
成功はリーダーシップから
トヨタでのリーダーシップの重要性
トヨタ・ジョージタウン工場のリーダーシップ構造
トヨタ・ジョージタウン工場のスタッフ部門のリーダーシップ構造
リーダーの要件
グループリーダーの典型的な1日の役割
現場のリーダーシップ構造をつくる
リーダーの人選
リーダーを育成する
リーダーの後継者育成計画
第11章 卓越したリームメンバーを育成する
私たちは車をつくるだけでなく、人材もつくります
スタートするのは、適切な人材を選ぶ
チームメンバーを会社のカルチャーに馴染ませる
業務教示教育ーー卓越したスキルを育成する鍵
トレーニング計画作成と成果のフォロー
技能系社員を長期的に育成する
品質サークル
トヨタの改善提案制度
チームメンバーをリーダーシップの職位に育てる
自分の流儀活動は、チームの結束を高める
会社のすべての部門で実際のスキルに投資する
第12章 部品メーカー、パートナー企業と一体となって開発する
グローバル競争の中での部品メーカー
短期的コスト削減 vs 長期のパートナーシップ
トヨタウェイの部品メーカーとのパートナーシップ
部品メーカーとのパートナーシップの7つの特徴
リーンな拡張企業を構築する
部品メーカー管理の従来モデルvsリーンのモデル
第5部 継続的学習のための根本原因からの問題解決
第13章 トヨタ式問題解決法
単なる問題解決手法ではない
あらゆる問題は、改善のチャンスだ
問題解決ストーリーの語り方
第14章 状況を徹底的に理解し、問題点を定義する
撃つ前に注意深く狙え
最大の成果が出るような本質的問題を探す
問題を逆方向から見る
問題を定義する
強力な論拠をつくる
第15章 根本原因の分析を徹底的に行う
効果的な分析の原則
解決可能な問題を探し出す
根本原因をシンプルな言葉に凝縮する
1枚の絵は1000語に値する
全部の要素をまとめる:A3の1ページレポート
可能な原因は深く調査する
第16章 コンセンサスを得ながら、代替案を検討する
幅広くあらゆる可能性を検討する
単純性、コスト、権限内領域か、迅速に実施できるか
コンセンサスづくり
アイデアの有効性を検討する
最善案を選ぶ
問題を正しく定義すれば、解決策はついてくる
第17章 プラン、ドゥー、チェック、アクト
プラン:実行計画を作成する
ドゥー:対策を実施する
チェック:結果を検証する
アクト:対策と行動計画に必要な調整を施す
アクト:次のステップを設定する
ついにアクション
第18章 ストーリーを語るA3報告書の作成法
報告書の作成では「短い言葉はいいことだ」
A3の使い方を決める
A3型問題解決報告書作成のプロセス
A3報告書のあらすじ
ファーマットのヒント
問題解決ストーリーA3報告書の最終版
A3に関する最終コメント
第6部 変化を管理する
第19章 リーン導入の戦略と戦術
どこからはじめるか
リーン導入の階層、戦略、ツール
正しい方法で行う忍耐心を持つこと
第20章 変化をリードする
リーン化の変革で社内政治を防止できるか
トップ、ミドル、ボトムからのリーダーシップ
評価指標でリーンになれるか
カルチャーを変えるために行動様式を変える
パートナー企業にリーンを広げる
さあ、やってみて、最善を尽くせ
訳者あとがき
索引
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