エンジニアの優位性を活かす方法
大滝令嗣「理系思考 エンジニアだからできること」、ランダムハウス講談社(2005)
お奨め度:★★★★
著者の大滝さんは、カリフォルニア大学サンディエゴ校で、電子工学科の博士課程を修了し、東芝を経て、コンサルティングの道に入った方である。その後、人材コンサルティングで有名なマーサーで会長まで上り詰めた人でもある。
僕が大滝さんの存在を知ったのは、
営業プロフェッショナル高業績の秘訣―コンピタンシーモデルで解明する(1996)
を読んでからである。この本は、ちょうど、僕がコンピテンシーに興味を持つようになって来た頃に出た本で、日本ではコンピテンシーという概念紹介のさきがけになった本でもある。この本を読んですばらしいと思ったのは、極めて、論理的、分析的に書かれているからである。
コンピテンシーそのものについては、大学院で一通りのことは学んでいたが、当時、営業マネジメントのコンサルティングをしていた中で、マネジメントプロセスの実行に手を焼いていたときに、出会って衝撃を受けた本でもあった。ついでに言えば、その後の弊社のコンピテンシーがらみの事業はこの本に大きな影響を受けている。
さて、話が脱線したが、このパターンのビジネスマンは実に多い。このパターンというのは、いうまでもなく、エンジニアでキャリアを始め、キャリアを積んでいく中で、エンジニアリング以外の分野、例えば、経営で卓越した能力を発揮し、成功するというパターンである。最も著名なのは、おそらく、大前研一氏だろう。
この本を読んでみると、なぜ、そのようなキャリアが成立するかがよくわかる。エンジニアにはエンジニア独特のものの見方や考え方、仕事への興味の持ち方があり、そして、それが、例えば、人事マネジメントといった一見畑違いの分野であっても競争優位源泉になるのだ。
そんなことをいろいろな側面から教えてくれる1冊の本である。生涯1エンジニアでありたいと思っている人も、卒業して人の上に立つことを目指す人も、また、事業を目指す人にもぜひ、読んでいただきたい1冊である。
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目次
はじめに
序章 つぶしのきかないサラリーマンになるという危機感
1 エンジニアは本当につぶしがきかない?
2 今も変わらぬエンジニアたちの苦悩
第1章 エンジニアを大切にしない日本
1 不安感が拭えない日本の行く末
2 エンジニアを飼い殺しにする大企業
3 エンジニアとして生き残るために
第2章 見方を変えれば、今の仕事もうまくいく
1 会社に自分の人生を決めさせない
2 自分なりのテーマを見つけよう
3 ビジネススクールの是非
4 エンジニアに役立つ勉強術
5 自分の未来を切り拓くために
第3章 いつか、人の上に立ったとき
1 プロジェクトリーダーになってしまった!
2 リーダーの三条件
3 日ごろのネットワークが君を救う
第4章 エンジニアを卒業するなら
1 理系思考はすべてに活かせる
2 理系だからこそ転身しやすい職業
3 起業という選択肢
4 経営学とは無縁の経営者たち
5 転んででもタダでは起きない精神
終章 エンジニアは錬金術師
1 エンジニアは、価値創造の中心にいる
2 バラ色のエンジニア生活を送るために
3 宇宙へと広がるエンジニアの夢
4 エンジニアはつぶしがきく!
おわりに
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