行動の原因を外部環境に求める
杉山尚子「行動分析学入門―ヒトの行動の思いがけない理由」、集英社新書(2005)
お奨め度:★★★★
著者の杉山さんは、数年前に、同じ書名の専門書を出版している。
杉山尚子他「行動分析学入門」、産業図書(1998)
この本はすばらしい本なのだが、ちょっと難しいのと、高価なので、あまり人に紹介しなかった。ずっと、この本の新書がでないかなと思っていたが、8年経って、やっと出版された。これも「行動」への関心が高まっていることの証だろう。
部下が何か失敗をしたときに、「あいつはやる気がない」ということを言ってみても、評価にはなるが、問題の解決にはならない。心理的な問題に関しては、この種の評価をするだけで終わっていくケースが多い。
しかし、これは本来、その人のもつ可能性の芽を摘んでいることになるかもしれないし、プロジェクトのような有期的な業務環境ではそのような評価を100回するより、その人をちょっとでもよいから変える方がはるかに意味がある。
そこで、注目されるのが「行動分析学」という手法である。この概念は、「行動随伴性」という概念によって、行動の原因を人間の内面(気持ち)ではなく、外的環境に求めようというものである。詳しい話は、こちらを参考にしてほしい。
プロジェクトマネージャーの方には、ぜひ、読んでほしい。また、マネジメントのツールではなく、セルフマネジメントのツールとしても使える。特に、習慣づけにおいては、この行動随伴性というのは重要な役割を果たしている。このあたりに興味を持つ方もぜひ、読んでいただきたい1冊である。
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目次
第1章 心理学をめぐる誤解(心とこころ;心理学にはいろいろある ほか)
第2章 行動の原理(好子出現の強化;嫌子消失の強化 ほか)
第3章 行動をどのように変えるか(新年の誓いはなぜ破られるか?;知識こそが行動の源なのか? ほか)
第4章 スキナーの思想と実験的行動分析(スキナーの哲学;はじめはネズミ、そしてハトへ ほか)
第5章 言語行動(人間の特徴は、言葉の使用である;スキナーの『言語行動』 ほか)
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