実践を重視したコミュニティとは
エティエンヌ・ウェンガー、リチャード・マクダーモット、ウィリアム・スナイダ(櫻井祐子訳)「コミュニティ・オブ・プラクティス―ナレッジ社会の新たな知識形態の実践」、翔泳社(2002)
お奨め度:★★★1/2
戦略や計画を作っても実行できない。この問題に対する議論はさまざまな視点から行われているが、コミュニティ・オブ・プラクティスはその中で、学習と言う視点からの見識を与えるものである。
この本で提唱されているコミュニティ・オブ・プラクティスとは、ある分野における知識の習得や研さん、あるいは知識を生み出すといった活動のために、持続的な相互交流を行っている人々のコミュニティを指している。そして、仕立て屋を例に挙げて、伝統的な徒弟制度における学習の多くは、職人や上級徒弟の間の相互交流で行われていると分析し、「学習はコミュニティ・オブ・プラクティスへの参加の過程である」と結論づけた上で、コミュニティ・オブ・プラクティスの重要性を説いている。
ここで学習といっている内容がポイントで、学習とは技能や知識の習得ではなく、コミュニティ・オブ・プラクティスに参加することによって生まれる役割やプロセスの変化であり、ゆえにこれが実践コミュニティとして機能するというロジックになっている。
コミュニティ・オブ・プラクティスという考え方は、実行という点において非常に意味のあるものであり、多くの企業やプロジェクトが抱えている悩みを解決するポテンシャルを持つものである。
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目次
第1章 実践コミュニティについて―今なぜ重要なのか
第2章 実践コミュニティとその構成要素
第3章 実践コミュニティ育成の七原則
第4章 発展の初期段階―実践コミュニティの計画と立ち上げ
第5章 発展の成熟段階―実践コミュニティを成長させ、維持する
第6章 分散型コミュニティという挑戦
第7章 実践コミュニティのマイナス面
第8章 価値創造の評価と管理
第9章 コミュニティを核とした知識促進活動
第10章 世界の再構築―組織を超えたコミュニティ
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