考具
加藤昌治「考具―考えるための道具、持っていますか?」、ティビーエスブリタニカ(2003)
お奨め度:★★★
21世紀になってから、思考法ブームがずっと続いている。しかし、どうもしっくりこないと感じられる人も多いのではないかと思う。
思考法など一朝一夕にできるものではないし、たとえば、品質管理の世界では、古くからQC7つ道具というような名称の道具があるように、自分の道具箱の中に入れておいて、必要に応じて引き出し、使うものだ。
しっくりこない理由に、そもそも、「道具箱の中に何を入れておけば間に合うのか」、つまり、QC7つ道具のようなイメージがはっきりしないことがあげられる。これは無理もない。QCであれば道具を使うことになる目的が明確で、それにあわせた道具をそろえておけばよい。ところが、思考法が対象にしているのは、日常的な仕事であったり、マネジメントであったり、商品開発であったり、インシデント対処であったりする。
ゆえに、何をそろえておけばよいかがよくわからないのだ。これが気持ち悪い。
それではというので、この本の著者の加藤昌治氏はそれ全部を一式にしてしまえということで、「考具」という言葉を考案された。書店でこの本を目にしたときはちょっとしたインパクトがあった。今まで腑に落ちなかったものが、落ちた感覚である。
この本で紹介されている思考法そのものに目新しいものはない。というより、そんな目的で書かれた本ではないのだろう。ただ、上に述べたような意味でも、あるいは、思考の「カタリスト」として1冊持っておく価値のある本だろう。
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