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2009年7月26日 (日)

「違いのわかる」ビジネスパースンの時間術

4794217064 長野慶太「TIME×YEN 時間術 (タイムエン時間術) すべての時間を成果に変える31の鉄則」、草思社(2009)

お奨め度:★★★★★

時間管理に成果の管理を統合し、具体的な方法論にまで展開した、時間術の本。これまでの時間術本とは一線を画する一冊。

僕は時間術の本は読まない主義であるが、にも関わらず、共感を持って読め、みさなんにお奨めしたい一冊。

僕が時間術ものを読まないのは、そんな本を読むこと自体が、時間の無駄だと思っているからだ。理由は明快である。時間とは効率的に使うものではなく、効果的に使うものだと思っているからだ。

なんだ、同じじゃないかと思う人がいるかもしれない。そのように思うあなたがもし、マネジャーやプロジェクトリーダーであれば、即刻、職を辞した方がよい。

効率的に使うというのはパフォーマンスを上げればできる。たとえば、この本は213頁あるが、この本を1時間で読める人と、2時間で読める人を比べると、同じレベルの理解が出来たとすると1時間で読める人の方が効率がよいことになる。

ここで、1時間で読めた人は「ふんふん、長野慶太さんはいいこと書くなあ」と思いながら読んで、次の日には忘れてしまった。

2時間で読んだ人は、何とかプロジェクトの中で自分の仕事をうまくやりたいと思って読んでいて、時給に考えて時間を使うために、色を使った情報管理や、コミュニケーションの改善など、本で理解したことをすぐに実践したとしたらどうだろう?2時間かかった人の方が遙かに、「効果的に」時間を使っていると言える。

つまり、効率的に時間を使うには目標だけでよいが、効果的に時間を使うには、目的が必要なのだ。目的と使う時間を統合して管理をする必要がある。しかし、そこまで書いてある時間術の本は見かけない。だから、あまり時間術の本は読まない。

2009年5月11日のほぼ日日記にも書いたが、僕は長野慶太さんの「焚書」のファンである。が、上に書いたような思い込みがあって、この本は本屋でも平積みを見かけたときにも、手に取らなかった。

ところが、縁というのはあるもので、編集の方から書籍プレゼントに申し入れがあって、とりあえず、読んでみた。僕の考え方に近い時間術が述べられている。そのためのノウハウが体系化されていて、時間術としては画期的な本である。さすが長野さんだ。

実はという話がもう一つある。2009年5月11日の日記を読んで頂いた長野さんから、「米国」から「封書」で達筆の礼状を戴いた。著者から書籍の紹介をしたお礼のメールを戴くことは珍しいことではないが、封書の米国の住所と、手書きの手紙にちょっとびっくりしたし、印象に残っている。

この手紙に、僕のホームページに書いているプロマネの考え方に共感するいう旨のことが書いてあり、ちょっとうれしかったのだが、この本を読んでそのように感じられた理由がよく分かった。

この本のポイントは3つほどある。

一つ目は、金銭感覚のように、時間の消費感覚をつかめということ。タイトルにもなっているTIME×YENというのはそういう意味だ。そのために、長野さんは以下のようなモデルを提案している。30歳のあなたが、人生で使える時間は50年で、260,000時間。1日24時間のうち、睡眠や食事などの不可欠な時間を除くと14時間。すると、

T\14×365日×50年=260,000

という方程式が成り立つ。つまり、いやでも全財産から、1日、T\14ずつ払って行かなくてはならない。この感覚を身につけろという。本を買うときの意志決定を例としてあげている。たとえば、1500円の本を買うときに、その本に1500円の価値があるかどうかを考えるのはもちろんだが、そこに、読書時間を加えて考える。これがタイムエンという考え方だ。

この感覚を身につけるには、時間の使用が見える化されている必要があり、そのためには、タイムログをとり、見積もり感覚を身につけることが必要だ。

二番目は、ちりも積もれば山となるを実践する。これは、細切れ時間を使うと使うことありきの考え方ではなく、一つのアクティビティを3秒減らせば、一日で浮く時間はバカにならないので、これを有効に活用せよということ。また、無駄なことはしない。

これを「時給」という指標を考えることによって、判断をしていけと進めている。また、3秒減らすためのTipsをたくさん、紹介している。

最後は、時間を使うときには、その行動は目的にかなっているか、また、設定した目標は目的と整合しているということをきちんと確認した上で、その目標の実施に対して、想定している時間の見積もりが合理性があるかどうかを判断しなさいということ。この本では、ROIを模したROT(対時間効果)という指標を提案し、ROTを上げることを考えることが大切だと述べている。

このためには、常に、全体像を把握すること。特に、人生の全体像を把握することが重要である。目的があり、全体が把握できて初めて、目の前の効率より、目標を重視することができるようになると述べている。

もうおわかりだと思うが、長野さんの時間術は、時間術だと称しているが、実は、時間とコスト、そして成果(とその品質)のバランスをうまく取らないと言っており、プロジェクトマネジメントの原点である。

それを長野さんらしい、パンチの効いた表現で伝えようとしているので、自己啓発の目的だけではなく、マネジメントの基本的な考えを身につける目的でも役立つ一冊である。

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