ワークショップをやりたいと思ったらとりあえず、この本
堀 公俊、 加藤 彰「ワークショップデザイン――知をつむぐ対話の場づくり」、日本経済新聞出版社(2008)
お奨め度:★★★★1/2
ワークショップという言葉を日常的に耳にするようになってきた。ワークショップはすばらしいという効能もだんだん言われるようになってきた。そこで、やろうと思うと、「さて、、、」となるのではないかと思う。イメージはなんとなくあるが、具体的にどうすればよいか全くわからないので、戸惑う。こんな話も時々、聞くようになった。
そこで、この本。ワークショップのプログラムに焦点を当て、どのように設計するかから、ちょっとした小技(アクティビティ)まで、体系的にまとめられている。
この本では、ワークショップを
多様な人たちが主体的に参加し、チームの相互作用を通じて新しい創造と学習を生み出す場
と定義する。そして、「参加」、「協働」、「創造」、「体験」、「学習」の5つがワークショップのキーワードだと説いている。また、ワークショップのタイプには、
人間系(教育学習型)
組織系(問題解決型)
社会系(合意形成型)
の3つのタイプがあり、どのようなところで使われているかを説明している。
タイプの違いはあってもワークショップの構成要素は
・チーム(誰がどんな環境に集まるか)
・プログラム(何をどういう順番でやるか)
・ファシリテーター(どうやって臨機応変に対応しながら進行していくか)
であることは同じで、これらを以下の手順で決めて行くことをワークショップのデザインと呼んでいる。
(1)コンセプトを固める
(2)プログラムの方針・型を決める
(3)プログラムの詳細をつくる
(4)開催準備をする
次に、デザインの際に使えるプログラムの型として
・起承転結
・体験学習
・発散収束
・問題解決
・目的探索
・過去未来
・発想企画
・環境適合
・組織変革
を紹介している。少なくともこれらのどれかのワークショップを行いたい場合には、読んで見る価値がある。
そして、これらの型を念頭におきつづ、具体的なデザインの方法についてかなり詳細に述べている。その中で、プログラムの単位であるセッションの構成といった、ちょっと普通では見られないようなレアな情報がさりげなく入っているのがこの本の全般的な特徴だ。
次の技術編では、ファシリテーターが身につけておくと便利な、いろいろな小技(アクティビティ)やツールの使い方がかなり詳細に書いてある。ただし、この部分、本で読むのはつらい。
この本で一番感心したのは、上に紹介した型ごとに、いろいろなプログラムサンプルが紹介されていることである。これは役立つと思う。また、実際のワークショップの作り込みの事例を使った紹介などもあり、たいへん、具体的なイメージしやすい内容になっている。
堀さんと加藤さんという売れっ子ファシリテータ2人で書いているこのシリーズ、前作のチームビルディングもそうだが、基本的なことから、本当に細かなことまで全部一冊本の中に納めようとしている。よく言えば、読んでもよし、使ってもよしのよい本。悪くいえば、読むには重いし、使うときには余計なものが入っているともいえる。
まあ、コストの問題だろうが、できれば2分冊にして欲しいなあと思う。
その編集の問題を除くと、内容的には文句なしによいし、類書がなかなか作れない貴重な本だと思う。
最後になったが、以前、この本も含めて、
という記事を書いたので、こちらも読んでほしい。
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