退屈力がキャリアや人生にタメをつくる
齋藤孝「退屈力」、文藝春秋社(2008)
お薦め度:★★★★★
先日、「ゆるみ力」の阪本 啓一さんと10年ぶりくらいにお話をする機会があり、この本を絶賛されていたので、読んでみた。素晴らしい本だ。ガ~ンという感じで、僕のバイブルの一冊になった。
文藝春秋のホームページには「齋藤哲学の極致」だと書かれているが、改めて、齋藤先生がいろいろな本で言われていることの意味がわかったような気がする。
斎藤先生のいわれる退屈力とは、
外からの強烈な刺激で脳を興奮させるのではなく、刺激の少ない状況で脳と身体を満足させることのできる能力
と定義されている。例として挙げられているのが武道である。単純な繰り返して、型と身につけていく。それが、無意識な状況で合理的な動作につながるからだ。ゲームとか、インターネットとかで、刺激がないと生きていけなくなった社会に対する提案である。
この本の中で退屈力の効用として、「タメ」の話が出てくる。この感覚がなくなっているというのが斎藤先生の指摘である。何か投資をしたものに対しては、すぐに成果を求めるようになってきている。企業も個人もだ。
個人のレベルでいえば、何か学んだことはすぐに使え、効果が出ないと「役に立たない」という評価をし、それ以上の追及を止めてしまう。実践的といえば聞こえが良いが、我慢ができなくなったという言い方もできる。こういう社会になってくると、親は勉強をしろとはいえなくなる。新入社員に3年我慢しろとはいえなくなる。一事が万事である。
しかし、タメは爆発的な力を発揮するためには重要である。
では、どうすれば退屈力をつけ、タメを作れるか?「勉強」だというのが斎藤哲学である。ゆえに、親は自信を持って子供に「勉強しろ」といえというのがこの本の訴えである。
ただし、これは教育だけに言えることはでない。人を育てる状況では広く通用する話だろう。部下を持つビジネスマンは、自省も込めて、読み、部下の育成について考えなおしてみてはいかがだろう?
ちなみに、齋藤孝先生は、たぶん、この5年で執筆された本の数で、ベスト3には確実に入っている方ではないかと思う。本屋にいくと、毎月、平積みで新刊が並んでいるような印象がある。この本にも書かれているが、斎藤先生は20代をタメを作る時期として大学院で勉強されたそうだ。
阪本さんがいうのは、斎藤先生がこれだけの勢いで本をかけているのは、退屈力があるかだらとのころ。ちなみに、阪本さんも独立されてから20冊以上の本を上梓されているらしいが、これもサラリーマンのタメだそうだ。この話は、「ゆるみ力」にもつながっているので、併せて読んでほしい!
【目次】
第1章 高度刺激社会批判
第2章 「退屈力」とは何か
第3章 ラッセル『幸福論』で考える「退屈力」
第4章 勉強が「退屈力」をつける
第5章 退屈は豊潤の源泉
第6章 人生に効く「退屈力
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