プロジェクトマネジメント危機脱出マニュアル
デイビッド・ニクソン、スージー・シドンズ(中嶋秀隆訳)「プロジェクト・マネジメント 危機からの脱出マニュアル―失敗ケースで学ぶ」、ダイヤモンド社(2006)
お奨め度:★★★★1/2
さっと読んでみて、いよいよ、こんな本が出てくるようになったかという思いを持った一冊。さすが、PMに対する独自の視点と見識をもたれる中嶋秀隆さんが選んで翻訳された本という感じ。
プロジェクトの失敗をきちんと体系的に整理し、問題領域を特定し、問題領域に対してソリューションを提供している。同じ狙いで書かれた本に、伊藤健太郎さんのベストセラー
伊藤健太郎:「プロジェクトはなぜ失敗するのか―知っておきたいITプロジェクト成功の鍵」
https://mat.lekumo.biz/books/2005/01/it.html
がある。この本は今でも一番売れたPM本らしい。
伊藤さんの本はプロジェクトマネジャー向けに書かれているのに対して、この本は、組織マネジャー、あるいはプログラムマネジャー向けに書かれた本である。プロジェクトマネジャーに役に立たないという意味ではないが、ソリューションがプロジェクトマネジャー一人では実行できないようなものがかなり入っているし、問題分析の視点も組織からの視点である。また、人事制度とのプロジェクト失敗の関係、PR(パブリックリレーション)との関係にまで言及されており、広範な内容をコンパクトに纏めた非常に参考になる本である。
特にプログラムマネジャーにお奨めしたい本だ。ただし、2つ注意がある。マニュアルと書かれているが、コンパクトに纏めるためか、記述の抽象度が高い。原書を読んでないのでなんともいえないが、訳は読みやすいと思うので、原書の書き方の問題だと思う。2つめは、これにもつながるが、相当、マネジメントに関する基本的な知識を持たないと読みこなせない本である。これはプロジェクトマネジャーより組織マネジャーを対象にした本だからだと思う。
久しぶりに★5つをつけようと思いとどまった。理由はエンパワーメントとガバナンスに関する踏み込んだ議論がないことだ。これらの問題に触れてないわけではなく、いろいろな側面から触れている。また、このような構成になる理由も分かる。しかし、これだけ工夫された本であるので、もう少し頑張って欲しかったなと思う。そこだけが、若干、不満であるが、それ以外、文句なし。
第1章 プロジェクトの失敗を定義する
第2章 なぜ、プロジェクトは失敗するのか
第3章 失敗から学ぶ
第4章 リスクと現実
第5章 人事部門とプロジェクト
第6章 PRとプロジェクト
第7章 プロジェクトの失敗と組織のかかわり
第8章 危機からの脱出
第9章 処方箋とサバイバル・スキル
第10章 決してやってはならないこと
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