PMstyle 2025年7月~10月Zoom公開セミナー(★:開催決定)

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2017年7月 5日 (水)

【PMスタイル考】第124話:「アウフヘーベン」(統合思考)

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Yuri

◆「アウフヘーベン」とは

今回のPMサプリは「統合思考」の話をしたい。

統合思考自体はコンセプチュアル思考の5軸の統合として、「コンセプチュアルスタイル考」で議論している。

【コンセプチュアルスタイル考】第21話:多様な意見を統合した新しいアイデアを生み出す

【コンセプチュアルスタイル考】第26話:5軸を統合した問題解決を行う

ここでは、もう少し一般的な議論をしてみたい。そう思ったのは、小池百合子東京都知事が、豊洲の市場問題で「アウフヘーベン」という概念を打ち出したことによる。「アウフヘーベン」とは

あるものを、そのものとしては否定しながら、更に高い段階で生かすこと。矛盾するものを更に高い段階で統一し解決すること。止揚。揚棄。

のことだ。つまり、豊洲か築地かの二者択一ではなく、両方の選択肢を踏まえ、昇華した案を出すという意味だ。小池知事は「アウフヘーベン」として、「築地は守る・豊洲を活かす」という戦略を打ち出した。その目的は

・豊洲移転後にかかる費用の赤字に対応するため
・「築地ブランド」を生かして土地を有効活用するため

だとしている。

具体的なプランはまだ出ていないので批判も多いが、その中で「いいとこどり」をしているだけなので、実現できないだろうという批判がある。この記事を書こうと思った直接の理由はこの点にある。

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2017年6月16日 (金)

【働き方を変え、生産性を向上させる:2】コンセプチュアルスキル

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Conceptual2

◆マネジメントとコンセプチュアルスキル

第1回はリーダーシップの問題を取り上げましたが、日本人がチーム全員がリーダーシップをとるのが苦手な一つの理由はコンセプチュアルスキルが低いことにあるのではないかと思われます。第2回はこのような観点から、コンセプチュアルスキルについて考えてみます。

コンセプチュアルスキルというと上級管理職に必要なスキルだと考えられていますが、これはちょっと要注意です。ロバーツ・カッツがコンセプチュアルスキルを提唱したのは1950年前後ですが、実はピーター・ドラッカーによりマネジメントの概念が提唱される前なのです。

ドラッカーのマネジメントは、管理、リーダーシップ、経営を統合したものです。これに対してカッツが示したコンセプチュアルスキルは、管理や経営に個別に必要なスキルでした。もちろん、ドラッカーのいうマネジメントにコンセプチュアルスキルは不可欠です。というよりは、コンセプチュアルスキルがマネジメントを創るといってもよいかもしれません。

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2017年6月 8日 (木)

【働き方を変え、生産性を向上させる:1】リーダーシップ

Productivity◆欧米と日本のリーダーシップスタイルの違い

生産性向上の取り組みの話題がいろいろな会社やコミュニティで聞かれるようになってきました。そこで、「働き方を変え、生産性を向上させる」というテーマで、今、感じていること、考えていることを何回かに分けて書いてみようと思います。

働き方改革が注目されていますが、一番、違和感があるのはリーダーシップです。いろいろな人とこの話をしていますが、多くの人は生産性を上げることはリーダー(シップ)の問題だと考えています。初回は、まず、この話をしたいと思います。

ちょっと古い本の話になりますが、今、「生産性―――マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの」という書籍が注目されている伊賀泰代氏の『採用基準』(ダイヤモンド社、2012)の中に興味深い指摘があります。以下のようなものです。

日本の考えるチームは「一人のリーダーがいて全責任を取る集まり」であるのに対して、欧米の考えるチームは「メンバー全員がリーダーシップを発揮する集まり」である。さらに、「日本ではチームの成果は“リーダーの優秀さ”で決まると考えるが、欧米では“メンバーのリーダーシップの総和”」によって決まると考える。

「採用基準」
 https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478023417/opc-22/ref=nosim
「生産性」
 https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478101574/opc-22/ref=nosim

実はこの指摘は、古くから言われているもので、僕が最初に見たのは同じマッキンゼーのコンサルタントであるジョン・R. カッツェンバックと ダグラス・K. スミスの書いた「「高業績チーム」の知恵―企業を革新する自己実現型組織」(ダイヤモンド社、1994)でした。ひょっとするとマッキンゼー流の考え方だったのかもしれませんが、今では欧米ではリーダーシップに対する一般的な考え方になっています。欧米のリーダーシップの本を読むと、チーム全員がリーダーシップを発揮するという前提で書かれています。

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2017年5月24日 (水)

【コンセプチュアルスキル講座】2017年度プログラムのご案内

2016年度は日本経済新聞出版社より、PMstyleで展開しているコンセプチュアルスキルの基本を解説した「コンセプチュアル思考」を出版しました。

2017年度は、この書籍を中心に展開していく計画です。

2017年のコンセプチュアルスキル講座は、

(1)基本
(2)思考
(3)行動
(4)業務

の4分野です。

「コンセプチュアルスキルの基本」、「コンセプチュアルスキル実践」を新たに加え、以下のようなラインナップになっています。

Conceptual_skill_training_2

※診断結果はコンセプチュアルスキル診断の結果です。こちらから実施できます。

http://pmstyle.biz/cncpt/conceptual_shindan.htm

以下、それぞれの講座について簡単に説明します。

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2017年5月16日 (火)

【コンセプチュアルスタイル考】第35話:コンセプチュアル思考による意味のイノベーション

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【参考文献】
好川 哲人「コンセプチュアル思考」、 日本経済新聞出版社(2017)
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532320623/opc-22/ref=nosim
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Imi

◆デザインの次に来るもの

先日、「デザインの次に来るもの」(クロスメディアパブリッシング)という本を読みました。著者は安西 洋之さんと八重樫 文さんで、安西 洋之さんはモバイルクルーズという会社を経営されており、ミラノと東京を拠点としたビジネスプランナーとして多くのデザインプロジェクトに参画されています。八重樫 文さんは立命館大学デザイン科学研究センター長で、デザインやデザインマネジメントが専門の方です。

この本が非常に興味深いのは、デザインのレベルを

1.デザインを全く取り入れていない
2.デザインをスタイリングとして扱っている
3.デザインをプロセスの中に取り入れている
4.デザインを戦略として位置付けている

の4つのレベルに分けたときに、4.の手法としてはデザイン思考が知られていますが、それだけではなく、特にEUを中心に

・デザイン思考
・ユーザー中心デザイン
・デザイン・ドリブン・イノベーション

の3つのアプローチが重視されており、デザイン・ドリブン・イノベーションで狙っているのが「意味のイノベーション」だという指摘です。

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2017年5月12日 (金)

【コンセプチュアルスタイル考】第34話:抽象度を変えてビジネスの問題解決を行う

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【参考文献】
好川 哲人「コンセプチュアル思考」、 日本経済新聞出版社(2017)
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532320623/opc-22/ref=nosim
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Tyusho

◆コンセプチュアルスキルはなぜ定着しないのか

コンセプチュアルスキルの基本は抽象度を変えることによって、物の見方を変え、(マネジメント)行動を変えることです。

コンセプチュアルスキルが提唱されたのは1950年前後で、まだマネジメントという概念がない時代です。この時代に個々の具体的な問題への対応だけではなく、個々の問題を組織全体としてみた(抽象化した)ときにどのように見えるかを考えたというのは画期的なことでしたが、マネジャーにとっては理解しにくいことだったと思われます。

前回述べましたように、今ではコンセプチュアルスキルはマネジメント以外でも、ビジネスやイノベーションなど様々な分野で必要になってきており、それらの活動に関わる人の必須スキルになっていますが、なかなか定着しないのはやはり概念としての難しさにあるといえるでしょう。

もっともなぜ難しいかと考えたときに、概念的であるので難しく、コンセプチュアルスキルがないとなかなかスキルとして習得しにくいというややこしい構造に難しさの本質があります。この構造を乗り越えてスキルを身につける突破口になるのが抽象度を変えて問題解決を行うことだと思われます。

ということで、今回はビジネスにおけるコンセプチュアルな問題解決について考えてみます。

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2017年4月25日 (火)

【コンセプチュアルスタイル考】第33話:コンセプチュアルスタイル

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Conceptual

◆「コンセプチュアルスタイル」

この連載ではコンセプチュアルスキルの基本的な考え方についてお話してきましたが、32話で一段落し、一冊の書籍にまとめることができました。連載記事の内容を倍くらいにして、かつ、まとまって読みやすいと思いますので、よろしければ手に取ってみてください。こちらの書籍です。

「コンセプチュアル思考」(日本経済新聞出版社)
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532320623/opc-22/ref=nosim

さて、新しい年度を迎えるに当たって、この後どのような方向にもっていくかを考えていました。

概念的にはこれまでの記事を基本編として応用編をやりたいと思っているのですが、具体的にはマネジメントへの活用をはじめ、事業への活用、イノベーションへの活用などいくつかの方向性が考えられ、少し迷いました。結局、PMと同じくやはりいろいろな視座や視点があるのだというところに落ち着き、「スタイル」を着眼点とすることにしました。つまり、「コンセプチュアルスタイル」の提唱です。



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2017年4月10日 (月)

【PMスタイル考】第123話:直観について考える

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Tyokkan◆人工知能vs直観

今回のPMスタイル考は直観について考えてみたい。

実は、連載「コンセプチュアルスキル考」の記事でも直観に関する記事があるので、こちらも併せて読んで戴ければと思う。

【コンセプチュアルスキル考】第11話:5つの軸について考える(2)~洞察は直観から生まれる
https://mat.lekumo.biz/pmstyle/2015/04/post-06fa.html

コンセプチュアルスキル考】第19話:直観を活かし、論理で検証する
https://mat.lekumo.biz/pmstyle/2016/02/post-0a89.html

まず、なぜコンセプチュアルスキルの話題をPMスタイル考で取り上げようと思ったかというと、一冊の本を読んだからだ。

奈良 潤「人工知能を超える人間の強みとは」、技術評論社(2017)

著者の奈良潤さんは

「エキスパートによる判断と意思決定の本質は”直観”にある」

という言葉で知られる米国の認知心理学者で、現場主義意思決定理論の創始者であるゲイリー・クライン博士に師事した唯一の日本人である。この本は、人工知能の分野におけるゲイリー・クライン博士の活動を紹介しながら、自身の見識を述べたものだ。



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【コンセプチュアルスタイル考】第32話:コンセプチュアル思考で、相手の立場で考える

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Aite

◆相手の立場で考えるとは相手の主観で考えること

ビジネスやマネジメントにおいてよく「相手の立場で考えよう」という言い方をします。なんとなくさわりのいい言葉であるので重要だと思う人は多いと思いますが、実践するのはそんなに簡単なことではありません。

相手の立場で考えるということは、相手の主観で考えるということです。ここを客観的なものだと思ってしまうとおかしなことになります。相手の意見を客観的に考えるだけなら、相手の立場で考える必要などあまりないからです。

ところが現実にはこの落とし穴に落ちているケースが多いように見受けられます。

どういうことかといいますと、大抵は自分の視点や価値観(つまり自分の主観)で、相手の都合のよいことはどういうことかと考えているのです。

たとえば、仕事のスケジュールが遅れてきたときに上司に報告した方がよいのか、しない方がよいのかと迷い、相手の立場で考えてみようとします。ここでよくあるのは、自分が相手の立場だったらどうするかと考えればいいと思ってしまうことです。そのように考え、「聞きたくない」だろうと考えてしまい、報告せずに怒られました。

こんな風にものごとを考えているケースは決してすくなくありません。

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2017年3月27日 (月)

【PMスタイル考】第122話:進捗について考える

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Shintyoku_2

◆「マネジャーの最も大切な仕事」

最近、読んで非常に面白かった本がある。この本だ。

テレサ・アマビール、スティーブン・クレイマー(中竹竜二監修、樋口武志訳)「マネジャーの最も大切な仕事――95%の人が見過ごす「小さな進捗」の力」、英治出版 (2017)
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4862762409/opc-22/ref=nosim

この本で、テレサ・アマビールは人間に改めて注目し、人間であることを示す要素として、モチベーション、感情、認識と考え、この3つの要素の相互作用を「インナーワークライフ」と呼んでいる。そして、インナーワークライフを向上位させることが、組織と個人の創造性、生産性を高めるためにもっとも効果的だと考えた

つまり、

「進捗は難しい挑戦をためらいなく受け入れ、より持続的に取り組んでいくよう人を動機づけする」

と考えたのだ。そして、インナーワークライフを向上させる方法を大規模な調査(3業界、7企業、238人対象)により分析している。

「チームや部下にとってやりがいのある仕事が、毎日少しで進捗するよう支援すること」

だった。これが書籍のタイトルにもなっている「マネジャーの最も大切な仕事」だというのだ。

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