【働き方を変え、生産性を向上させる:1】リーダーシップ
生産性向上の取り組みの話題がいろいろな会社やコミュニティで聞かれるようになってきました。そこで、「働き方を変え、生産性を向上させる」というテーマで、今、感じていること、考えていることを何回かに分けて書いてみようと思います。
働き方改革が注目されていますが、一番、違和感があるのはリーダーシップです。いろいろな人とこの話をしていますが、多くの人は生産性を上げることはリーダー(シップ)の問題だと考えています。初回は、まず、この話をしたいと思います。
ちょっと古い本の話になりますが、今、「生産性―――マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの」という書籍が注目されている伊賀泰代氏の『採用基準』(ダイヤモンド社、2012)の中に興味深い指摘があります。以下のようなものです。
日本の考えるチームは「一人のリーダーがいて全責任を取る集まり」であるのに対して、欧米の考えるチームは「メンバー全員がリーダーシップを発揮する集まり」である。さらに、「日本ではチームの成果は“リーダーの優秀さ”で決まると考えるが、欧米では“メンバーのリーダーシップの総和”」によって決まると考える。
「採用基準」
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「生産性」
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実はこの指摘は、古くから言われているもので、僕が最初に見たのは同じマッキンゼーのコンサルタントであるジョン・R. カッツェンバックと ダグラス・K. スミスの書いた「「高業績チーム」の知恵―企業を革新する自己実現型組織」(ダイヤモンド社、1994)でした。ひょっとするとマッキンゼー流の考え方だったのかもしれませんが、今では欧米ではリーダーシップに対する一般的な考え方になっています。欧米のリーダーシップの本を読むと、チーム全員がリーダーシップを発揮するという前提で書かれています。
◆改めて、リーダーシップとは何か
さて、働き方改革が騒がれながら、現実にはあまり変わっていない原因の一つはこのリーダーシップの考え方にあるように思います。つまり、チームの働き方を変えることを一人のリーダーに委ねているからです。
この議論の前に、リーダーシップとは何かを改めて確認しておきたいと思います。リーダーシップとは
批判や失敗を覚悟の上で、率先して物事を実行する。それにより、人を動かし、チームを動かし、成果を上げ、目標達成する
ことです。違う言葉で言えば
リスクをとって新しいことをする
ことです。
◆新しいこととは
ここで、新しいことというと
・新規事業を立ち上げる
・イノベーションを起こす
・新しいプロジェクトを立ち上げる
・新しいチームを作る
・新しい分野の挑戦する
といったことを思い浮かべるかもしれませんが、むしろ、「働き方を変える」新しいことというと
・知らない人を巻き込む
・自分がやると手を上げる
・みんなとは違う意見を言う
・場の空気を変える発言をする
・新しい仕事のやり方を提案する
といったようなことの方がイメージに近いものです。
日本がリーダーシップを一人のリーダーがいて、全責任を取ると考えると前者のようなイメージなのだと思います。実際にこのようなリーダーシップも必要ですが、とれる人が限られています。だから、リーダーについていくべきだと考えます。
しかし、リーダーシップの意味合いを後者まで広げて考えると、すべての人がとるべきなのです。そして、それが「働き方」を変えていきます。
◆リーダーシップの現実
ところが現実には、前者だけではなく、後者も一人のリーダーに任せています。そして、うまくいかないのは
・Aさんを巻き込むことができなかった
・自分にやれと言ってくれなかった
・異なる意見を言う場がない
・場の空気が悪い
・決められた仕事のやり方は効率が悪い
などと愚痴を言っています。これでは絶対に生産性は上がらないでしょう。
このように、まず、リーダーシップに対する考え方を変え、仕事のやり方を変えない限り生産性は上がらないでしょう。
◆プロアクティブなリーダーシップを!
プロジェクトマネジメントの世界でよく使われているコンセプトに「プロアクティブ」というコンセプトがあります。日本語では「前向きな」という意味ですが、そこから転じて、プルジェクトマネジメントでは「先を見越した」「事前対策的な」といった意味で使われています。
今求められているリーダーシップはまさにメンバー全員のプロアクティブなリーダーシップなのです。b
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