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2005年1月13日 (木)

プロジェクトはなぜ失敗するのか―知っておきたいITプロジェクト成功の鍵

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伊藤健太郎:「プロジェクトはなぜ失敗するのか―知っておきたいITプロジェクト成功の鍵」、日経BP社(2003)

お奨め度:★★★1/2

この本の出来そのものは、議論のあるところだと思います。失敗談というのは、プロジェクトマネジメントの話を聞けば、必ず、一つや二つは聞けますし、この本にある話もどこかで聞いたことのある話が結構あると思われる話しが多いと思います。

が、これを書籍という形で体系化したところを評価したいです。

そして、なにより、今の段階で失敗モノを出した出版社の姿勢に敬意を表します。プロジェクトマネジメントの成熟度の議論をしていくには、この種の本が不可欠です。ちょっと評論家的な意見になりましたが、この本の類書でどんどん失敗モノが出てくることを願っています。

熊とワルツを~リスクを愉しむプロジェクト管理

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トム・デマルコ (著), ティモシー・リスター (著), 伊豆原 弓:「熊とワルツを~リスクを愉しむプロジェクト管理」、日経BP社(2004)

お奨め度:★★★★1/2

話題には事欠かない本ですが、出版元である日経BP社のニュースに面白いエピソードが載っていました。この本は、ずっと「Risk management」という仮タイトルで進んできて、最後に「Walting with Bears」というタイトルになったそうです。

出版そのものも、このタイトルのとおり、熊とワルツを踊るようなリスクをとっているという解説がされていました。

好川の個人的な感想として、デマルコほどのビッグネームの新著ですので、このようなタイトルをつけることは、ローリスクハイリターンの戦略だと思うのですが、まあ、日本の出版社の感覚でいえば、信じられないことなのでしょうね。それはよく分かります。

なぜ、こんなにしつこくタイトル論議をしているかといいますと、この本は内容をとやかくいうより、タイトルにすべてが集約されていると思ったからです。熊に追いかけられているのではないのです。「熊とワルツを」踊るのです。これこそ、この本でデマルコが言いたいことのすべてです。

 PMBOKのリスクマネジメントを丁寧に読むと、実に、体系的なまとめ方がされています。それでいくと、「熊とワルツを」というのは積極的な受容戦略なのですが、この本は単にそのことを言っているだけではありません。

デマルコの今までの本もそうですが、彼の大家たるゆえんは、どうすればプロジェクトが成功するかの一点に絞り、理論的、行動、心理などのあらゆる要因を統合的に論じている点です。この本も例外ではありません。リスクという観点から、プロジェクトの成功法則が書かれています。リスクを楽しめることこそが、プロジェクトの成功法則になるといっており、それは、リスク戦略の妥当性を超えた議論だといえるでしょう。

とにかく、読んでみてください!

ちなみにこの本を読まれるのであれば、

ゆとりの法則 - 誰も書かなかったプロジェクト管理の誤解

ピープルウエア 第2版 - ヤル気こそプロジェクト成功の鍵

を一緒に読まれることを強くおすすめしたいと思います。思想的な背景を理解しておいた方が、得られるものが10倍、100倍大きいと思うからです。

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チームが絶対うまくいく法

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デイヴィッド・ストラウス (著), 斎藤 聖美 (翻訳):「チームが絶対うまくいく法~コラボレーション、リーダーシップ、意思決定のコツ」、日本経済新聞社(2004)

お奨め度:★★★★

 日本語で読めるチームマネジメントの本では一番よいと思います。

 プロジェクトマネージャーの知識のある人がチームマネジメントの本を読むと、最初のところで、そんなこと知っているで終わることが多いようです。これは当たり前の話で、組織論で議論されているチームマネジメントの初歩的なこと、特に、チームマネジメント計画に相当する部分はほとんどプロジェクトマネジメントにはメソドロジーとして組み込まれれているからです。PM手法が弱いのは運用ですが、そこに多くを割いている本はあまり多くありません。逆にいえば、プロジェクトマネジメント手法がきちんとしていることの証だともいえます。

 この本は計画より、運用(コントロール)に重点が置かれています。その意味で、間違いなく、多くのところで役に立ちます。

 また、意識して書かれているわけではないと思いますが、PMBOKのチームマネジメントとの対応が比較的はっきり分かります。その点でも、PMBOK派の人にはお勧めできます。

デッドラインを守れ!組織の絶対絶命を救う、究極の時間戦術

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ダン・キャリソン (著), 野津 智子 (翻訳):「デッドラインを守れ!組織の絶対絶命を救う、究極の時間戦術」、ダイヤモンド社

お奨め度:★★★★

タイムマネジメントを(プロジェクト)組織の問題だと捉え、誘拐、火星探査、航空機納品といった非常に時間的制約の厳しいな問題に対してどのように対処をしていったかを事例分析から描き出している。

この本の著者のダン・キャサリンは

アメリカ海兵隊式最強の組織

という本の著者でもあるが、この本も主に、組織的なメカニズムに焦点を当てている。

オビにアメリカ版プロジェクトXだと書いているが、NHKで取り上げているプロジェクトXとはずいぶん質が違う。ミッションクリティカルなテーマが多い。

ただし、プロジェクトXがやはり、プロジェクトXでしかないように、ここに描かれていることもかなり特殊な世界であることは間違いない。その中でも、日常的なプロジェクトでも考えさせられるようなレッスンズラーンドはちりばめられているのは、やはり、著者の力量だろう。

実践プロジェクトマネジメント―危機を乗り越える25の決断

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岡村 正司 (著), 日経コンピュータ編集 (編集):「実践プロジェクトマネジメント―危機を乗り越える25の決断」、日経BP社(2004)

お奨め度:★★★1/2

日本のIT業界では、プロジェクトマネジメントのイメージというのはあまりよくない。「権限」が与えられない割には、現場の全「責任」をとらされて苦労が大きい。ひところで言えば、こんなところだろう。

この本を読んでみれば、この構図は本質的な問題ではないことがよく分かる。著者の岡村さんは、IBMでワールドワイドで5本の指に入るプロジェクトマネージャーだと言われている。それゆえにできるのか、だからできるのかという点は気になるところだが、いずれにしてに、如何に、プロジェクトマネージャーの決断が重いものであるが、よく分かるだろう。

また、もう一つ、プロジェクトマネージャーが現場で苦労しているのは、「決断しようとしない」ことに起因していることもよく分かる。決断をすることが引き起こすと、決断することにより発生する責任。このはざまでさまよっているのが日本のプロジェクトマネージャーではなかろうか。

非常事態のリーダーシップ―危機を乗り切る9つの教訓

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非常事態のリーダーシップ―危機を乗り切る9つの教訓

お奨め度:★★★1/2

先月紹介した岡村さんの

 「実践プロジェクトマネジメント―危機を乗り越える25の決断

はいろいろな人からコメントを戴いた。なかでも、危機のときにプロジェクトマネージャー(リーダー)は何をできるかということに結構関心を持っている人が多かった。この興味はある意味で、現実的であるとも思う。

好川はプロジェクトマネージャーは平時のリーダーシップと、危機のリーダーシップで、エンジンを切り替えることができなくてはならないと思っている。このようなリーダーシップエンジンの切り替えを行うためには、何よりも重要なことは危機の認識である。

危機というのは識別できなかったリスク事象が発生した状況のことを言うのが一般的だと思う(これはパラドックスであって、プロジェクトマネジメント的にはリスクではないのだが)。つまり、計画にまったくないことが起こったときのこと。これは、そもそも、発生を識別するのが難しい。マイケル・ムーアの「華氏911」の代表シーンに、911テロの状況を告げられたブッシュが7分間まったくアクションを起こさず、小学生の授業を見ているというシーンがある。実際に、ある種のコンテクストがないとこれをクライシスだとは識別できない。一台目が突っ込んだときには単なる事故だと考えてもおかしくない。かれが大統領であるという事実を除くと、これは結果論だといっても間違いではないと思う。

が、彼が大統領であるとすれば、明からリーダーシップの欠如だ。

こんなときに、どのようなリーダーシップを発揮できればよいかということのヒントになる本である。

日常的に危機に直面すると思っているプロジェクトマネージャーの方は、ぜひ、読んでみてください!

いかにプロジェクトを成功させるか

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DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集部編 、「いかにプロジェクトを成功させるか」、ダイヤモンド社(2005)

お奨め度:★★★★1/2

ハーバードビジネスレビューのセレクション。

いわゆるプロジェクトマネジメントのノウハウものではお目にかかれない、読み応えのある議論がずらりと並ぶ。文句なしにお奨めしたい本。特に、" I PMO "を目指す方は、必読書!

まえがき――リアル・プロジェクト・マネジャーの不在
第1章 なぜプロジェクトの迷走を止められないのか
第2章 楽観主義が意思決定を歪める
第3章 チームEQの強化法
第4章 アイデアの具現者が企業を動かす
第5章 時間的制約は創造性を高められるか
第6章 リターン・マップ:時間対効果の最適化
第7章 デザイン・ストラクチャー・マトリックス法
第8章 大プロジェクトは小さく管理する

特に第1章、第6章、第8章がお奨め。これ以外にも、DSM(デザイン・ストラクチャー・マトリクス)の解説は、DSMが有名な技法であるにもかかわらず、あまりお目にかかれない。これもお奨め。

プロジェクトの成功とは何かがよく分からない人にもお奨めです!

プロジェクト思考を極めたいなら、これを1冊熟読してみてはどうだろう。もちろん、好川のセミナーへの参加も忘れてはならない(笑)

プロジェクト思考を極める 

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