プログラムマネジメント Feed

2006年10月25日 (水)

技術者のためのマネジメント入門

453213324601 伊丹敬之, 森健一編「技術者のためのマネジメント入門―生きたMOTのすべて」、日本経済新聞社(2006)

お奨め度:★★★★1/2

仕事柄、エンジニア出身のマネジャーにマネジメントの勉強をすることをお奨めすることが多い。確かにその目的に適う書籍は、日本にも結構あるのだが、視座がマネジメントにある本がほとんどである。つまり、経営の中でどのように技術を役立てていくかという視点がある。

しかし、この本は珍しく、視座が技術にある。技術を中心に経営をしていくにはどうしたらよいかを説明している。技術者に薦めたい本である。

内容もとてもよい。そんなに高度な内容ではないが、必要最小限の問題として、戦略のあり方、マーケティング活動のあり方、組織のあり方、プロジェクトマネジメントなど一通りの経営プロセスの解説がある。同時に、新事業創造、マーケティングコミュニケーション、ビジネスモデルといった事業マネジメントについても触れられている。

書き方も事例を中心にかかれており、実践的である。

特に、素晴らしいと思うのは、日本のMOTの本はなぜかあまり正面からプロジェクトマネジメントを取り上げていない。この本は経営プロセスの一つとして1章を割いて解説されている。拍手したい!

最後に、どうでもいいが、著者もなんとも豪華。編者の伊丹敬之先生、森健一先生は、もちろんだが、常盤文克先生、徳重桃子先生、佐々木圭吾先生、坂本正典先生、宮永博史先生、齊藤友明先生、西野和美先生。

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2006年10月16日 (月)

プロジェクトマネジメントはサイエンスかアートか

487311299001 スコット・バークン(村上 雅章訳)「アート・オブ・プロジェクトマネジメント ―マイクロソフトで培われた実践手法」、オライリー・ジャパン(2006)

お奨め度:★★★★★

著者がマイクロソフトで養ったプロジェクトマネジメントの技を披露した本。ソフトウエアプロジェクトの本だと、必ずといってもよいくらい、開発マネジメントのテクニカルな話題に重心が置かれるが、この本は違う。目標のマネジメント、人のマネジメント、組織のマネジメント、コミュニケーションのマネジメント、アイディアのマネジメントなど、本来のプロジェクトマネジメントのイシューを中心にして組み立てられている。具体的な内容は、目次を参考にしてほしいが、開発マネジメントについても、手法ではなく、仕事の進め方としてのポイントが書いてある。

ソフトウエア開発プロジェクトは、ハードウェアのプロジェクトとは違うと主張する人がよくいる。プロジェクトファシリテーションなどが妙にはやっているのもその流れだと思割れる。

しかし、この本を読んでいると、決してそんなことはないと思い知らされるだろう。ソフトウエアという商品の特性は確かにある。

しかし、そこで必要なマネジメントはハードウェアや、ソフトウエア以上にソフト的なサービス開発プロジェクトとなんら変わらない。マイクロソフトという会社のやり方は昔から何かと批判の対象になることが多かった。古くはDOSをめぐるビジネスのスタンス、Windowsに代表されるGUI環境ビジネス、最近ではインターネットへのアプローチなどだ。しかし、結局、最後に勝つのは、MSだった。

その秘訣はマネジメントがビジネスを意識したものであることと無縁ではないだろう。この本は、プロジェクトマネジメントに関心を持つ人に読んでほしいのはもちろんだが、もう少し、広く、マネジメントに関心をもつ人にもぜひ読んでほしい一冊である。ソフトウエアエンジニアリングの知識がない人が読んでも分からないところは少ないだろう。

マーケティングは50%がアートで、50%がサイエンスだといわれる。プロジェクトマネジメントもそういった側面がある。特に、MSが展開しているようなビジネスを強く意識したプロジェクトマネジメントはアートの要素が多い(エンジニアの人は自分たちの領域の方がアートの要素が多いと思っているかもしれないが、それは勘違い)。

その意味で、この本に書いてあることはまさに、プロジェクトマネジメントのアートの部分だ。

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2006年9月30日 (土)

企業統合で学ぶプログラムマネジメント

482226206501 金巻龍一、河合隆信、丸山洋、IBMビジネスコンサルティングサービス「企業統合―あるPCメーカー、成功の舞台裏」、日経BP社(2006)

お奨め度:★★★★1/2

PCメーカがM&Aを行い、契約完了後に、プログラムマネジメントを行うことにより、スピーディーに事業統合をする様子をストーリー形式で書いている。M&Aのストーリーとして読んでも面白いのだが、プログラムマネジメントのストーリーとして読んでみると、非常に学ぶところが多い。

プログラムマネジメントは単に単純なコンカレントだと思われている節もあるが、違う。プログラムマネジメントは、組織間の調整、プロジェクト間の調整にマネジメントフォーカスすることによって、調整要素の多い複雑な仕事をスピーディーに進める手法である。この本を読むと、M&Aのマネジメントプロセスを通してそのことがよく分かる。

実話に基づいているらしいが、これだけスムーズに進めていくには、相当なプロジェクトマネジメントの組織コンピテンシーが必要だろう。そこが逆にIBMの実話を読んでも、あまり参考にならない(つまり、IBMはもともとコンピテンシーが高い)ような気がしないでもない。その点が、読了後にこんなにM&Aがうまく行くのかとふと疑問を持った源泉かもしれない。

2006年9月29日 (金)

プログラムマネジメントに興味を持つ人の必読書!

482224541109 桑嶋健一「不確実性のマネジメント 新薬創出のR&Dの「解」 」、日経BP社(2006)

お奨め度:★★★★

新薬開発の分野はプロジェクトマネジメントに対する関心が高いが、その理由がよく分かる本である。著者は大学の先生だが、よくフィールドワークをしていて、分析、提言とも実践的であり、実務家に有益である。

この本では、製薬会社の競争優位源泉を「go ro no-goの判断」だという仮説を設定し、武田薬品をはじめとする数社のベストプラクティスの調査をし、その仮説検証をしている。この分析の過程で判明したベストプラクティスはまさにプログラムマネジメントのベストプラクティスである。プログラムの中でポートフォリオを使って不確実性への対処をするという発想は、P2Mなどで提案されている手法である。

第4章の産業間の比較も非常に興味深い。問題解決モデルを作って、新薬開発のプラクティスで実施されていることを分析していいる。非常に合理的なプロセスになっていることが分かる。研究所としてみた場合には、(少なくともこの本にある書かれている範囲では)強引な結論を出しているという感じがするが、全体としては説得力があり、プログラムマネジメントの実践を知る上では、非常によい本である。

その意味で、製薬業界の方はもちろんだが、いろいろな業界の人が読む価値のある一冊である。

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2006年5月12日 (金)

プロダクトストラテジー

4822244423マイケル・E・マクグラス(菅正雄, 伊藤武志 訳)「プロダクトストラテジー~最強最速の製品戦略」、日経BP社(2005)

お奨め度:★★★★1/2

戦略、マーケティングマネジメント、技術マネジメントのバランスがよく取れたプロダクトマネジメントの本。米国のビジネススクールの定番テキスト。

マイクロソフト、IBM、デル、インテル、シスコ、アップル、ゼロックスなどグローバルなハイテク企業は、どうやって競争力のある製品を生み、育てたのかという切り口で、ベストプラクティスとなる戦略パターンを提示している。

製品戦略に留まらず、タイミング、計画立案、コンティンジェンシープラン、マーケティングや資金面での検討事項、などといった製品戦略に付随する様々なプロセスについても言及されているので、非常に実践的な内容になっている。

テキストとして書かれているので、それなりに知識がある人が読むと、説明が冗長であり、まどろっこしい部分があるが、初心者が最初に読み、なおかつ、それなりに深い知識を得るには絶好の本である。

特に、戦略、マーケティングマネジメント、技術マネジメントのバランスについて適切な知識が得られると思うので、プロダクトマネジャーになる人にお奨めしたい本である。

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