プロダクトマネジメントの新しいフレームワーク
ライアン・ホリデイ(加藤恭輔解説、佐藤由紀子訳)「グロースハッカー」、日経BP社(2013)
お奨め度:★★★★★
話題のグロースハッカーの日本初の入門書。グロースハッカーとは顧客の確保と維持し、サービスを大きく成長させていく新しいマーケッタである。
グロースハッカーの実践者として、クックパッドでプレミアムサービスを担当している加藤恭輔氏がクックパッドの活動を例にとってグロースハックの解説をしている。
この本では、グロースハックをルールきっとではなく、「マインドセット」だとし、
ステップ1 まずは人が欲しがるものを作れ
ステップ2 自分なりのグロースハックを探して
ステップ3 クチコミを巻き起こせ
ステップ4 つかんだユーザーを手放すな
の4ステップで実践するとしている。
グ ロースハックのポイントは、製品開発とマーケティングの分断を取り除くことにある。これまでマーケッターの仕事は作られた製品を膨大な費用を使ってブラン ディングし、販売することだった。これに対して、グロースハックでは、製品自体がマーケティングをしてくれるような仕組みを作ることが多い。グロースハッ クの最初の例はマイクロソフトのHotmailであるが、ここでマイクロソフトがやったことは、メールの末尾に
「追伸 愛しているよ。ホットメールで君も無料メールをゲットしよう」
と表示することだった。これでメール自体が広告になった。このようにクチコミは設計されなくてはならない。
そして、製品は常に改善され、獲得した顧客を維持していく。これまでマーケティングにかけられていた膨大な費用はこの改善の開発にかけられる。
こ のようなグロースハックの活動ではマーケッターの仕事はPMF(Product Market Fit)へ到達していることだとしている。PMFとはリーンスタートアップで提案された概念で、MPV(Mimimun Product Value)からはじめて、最終的に目指すところである。
グロースハックはリーンスタートのようなインクリメンタルな製品提供に対する マーケティングの手法として考えらたものであると思われる。本書では、どんな分野でも適応できるといっているが、この言い方は100年前にフォードが「ど んな色でもありますよ。黒である限りは」といったのを連想させる。
反復リリースをする製品ならば、どんな製品でも従来の手法とは比べ物にならない威力を発揮するマーケティングの手法である。
同 時に、この議論は品質マネジメントの議論をそばにおいて議論することはできない。インクリメンタルな製品提供はリーンでは機能になっているが、本来、品質 マネジメントの方法として考えられてきたものだ。インクリメンタルな製品すべてに対応するにはこの点をどのようにカバーしていくかを考える必要がある。
この点も含めて、プロダクトマネジメントの方法としての体系化が求められる。
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