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2013年12月24日 (火)

「ひらめき」の達人たちはどんなことを考え、行動しているのか

4040800052伊藤 穰一(狩野 綾子訳)「「ひらめき」を生む技術 (角川EPUB選書)」、KADOKAWA/角川学芸出版(2013)

お奨め度:★★★★★+α

MITメディアラボで伊藤穣一所長が自分の人脈をつなぎ各界の第一線で活躍するスペシャリスト達を呼んで、学生たちの前でディスカッションする「カンバセーション・シリーズ」の中から、伊藤さん自身が対談した4名の対談録に、伊藤さんの解説をつけた本。

刺激を受けるという点においては、まれにみる一冊だ。


対談した4人は、伊藤さんの友人だが、誰でも知っている人ばかり。

・「ロスト」や「スタートレック」の主演J.J.エイブラムス
・デザインファームIDEOのCEOティム・ブラウン
・フェーズブックやジンガなどに早い時期から投資し、シリコンバレー全体の考え方に大きな影響を持つ投資家でかつ、「リンクトイン」を経営するリード・ホフマン
・社会派コメディアン バラチュンデ・サーストン

の4人。4人に共通しているのはいずれも現場の活動から、社会にインパクトを与えることに成功している点。これは伊藤さんが率いるメディアラボでのテーマでもある。

J.J. エイブラムスとはモノ作りの話をしている。J.J.エイブラムスは映画を作るのは霧の中のドライブのようなものだという。向かうべき方向の検討はついてお り、それがもっともよいルールだと思って進んでいるが、突然、目の前に巨大な峡谷が出てきて遠回りしなくてはならなくなったりする。

霧の中で納得のいくものを作るには、よいアイデアに常にオープンであることが重要だという。

同時に、伊藤さんのいう{アート、デザイン、サイエンス、エンジニアリング}からなる創造性のコンパスが必要だ。これらはまったく性質を異にするものだが、統合される必要がある。

ティ ム・ブラウンとはコ・デザインの話題になる。IDEOの活動は日本でも大変興味を持たれているが、日本ではデザインというものになかなか理解が得られない ようである。ティム・ブラウンはIDEOの活動を通じて分かったこととして、デザインの範囲は思ったよりはるかに広かったと述べている。それは、デザイン の本質はシステムをデザインすることにあり、製品をデザインすることにはないからだ。ティム・ブラウンやIDEOはデザインの対象を製品からシステムに移 行したのだ。

システムのデザインは製品のデザインのようにコントロールできないことがある。そこで求められるのは、ニュートン的なデザイ ンではなく、ダウィン的な考えが必要だという。つまり、物事は常に発展し、変化するという前提のもとで時にはコントロールを失うことも必要だと考えること だ。

そこで、ユーザーと一緒に素晴らしいものを創り上げていくコ・デザインの発想が大切になるという

リード・ホフマンは今の社会を生きていくには、従来の良い大学に入り、優秀な成績をとり、よい仕事を得ると言うモデルは崩壊しており、生き方も仕事の仕方においても起業家的な考えを持つことの重要性を説いている。

こ のような考えは日本でも注目されるようになってきたが、仕事の仕方は少し変わってきたが、生き方が変わらない限り、本質は変わらない。シリコンバレーで仕 事をする人と話をするとシリコンバレーに住んでみないと分からないという人が多いが、リード・ホフマンがいうところはまさにこれだろう。

起業家的な生き方とは何かというと、リード・ホフマンの唱える「ABZプラニング」の考え方に象徴される。最初に手がけるプランA、次にいつ方向変更をすべきかを考えるプランB、そして全部がダメになった場合のプランZを常に用意しておくことだ。

4人目のバラチュンデ・サーストンは黒人のコメディアンである。バラチュンデ・サーストンとはまず、コメディがユーザーインターフェースになるかどうかという議論をしている。そして、さらには、コメディが人と人をつなぐ道具になるかという話に発展する。

4人との対話を通じて常に伊藤さんの中にあるキーワードはセレンディピティである。みんなに対して、セレンディピティがあるかといった問いかけをしている。また、セレンディピティと秩序についても何度か問いを発している。

まとめとして、多様性というキーワードを挙げている。この活動そのものがその目的を孕んでいるが、伊藤さんはできるだけ多様な人材をコネクトすれば、クリエイティビリティや創造性が生まれると信じている。そして、多様性からシンパシーを生み出すことが重要だとしている。

多様性もそうだが、セレンディピティをどのように扱っていくかについて非常に興味深い捉え方をしている。ここに非常に刺激を受けることができる本だ。

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