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2011年5月30日 (月)

いつまでも色あせない図解を創るために(ファンが選ぶビジネス書9)

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ドナ・ウォン(村井瑞枝訳)「ウォールストリート・ジャーナル式図解表現のルール」、かんき出版(2011)

お奨め度:★★★★★

ウォールストリート・ジャーナルで、9年間にわたり、誌面のグラフィック責任者を務める著者が、自身の持つインフォメーション・グラフィック戦略のノウハウを惜しげなく、教えてくれる一冊。すべてのビジネスマン、特にマネジャーにおすすめしたい。

本を最初に手にとったときに、まず、びっくりしたのは、著者、ドナ・ウォンの肩書き「インフォメーション・グラフィック戦略ディレクター」。グラフィックデザイナーなら聞いたことがあるが、こんな仕事があるのかと思った。さらにびっくりしたのは、雑誌にグラフィック・エディターのディレクターがあるということ。

しかし、内容をみて納得。たしかに、そのような職業やロールは必要だ。

この記事を読んでいただいている方は、図解表現という言葉から何を連想されるだろうか?この本の真骨頂は、5章の「プロジェクト管理に役立つ図表」ではないかと思う。もちろん、1章から3章の基本ルールも、4章の「図表作成で発生する問題の解決方法」も素晴らしいのだが、図で考えを変えるだけではなく、人を動かすというのは、並大抵なことではない。

たとえば、プロジェクトリーダーは進捗を共有すべきだという。口でいうのは簡単だが、そのためにどうしますかと尋ねると、ミーティングで丁寧に説明するとか、疑問が残らないように議論・話し合いをするとかいう。しかし、現実には、難しい。なぜかというと、イメージが共有できない限り、情報というのは共有できない。この本で紹介されている方法を使えば、一目で共有できるだろう。わざわざミーティングをする必要もない。

弊社では、ファシリテーション・グラフィックのセミナーを5年間、プロジェクトリーダー向けに提供している。プロジェクトを運用する上で、きわめて有効な方法だと思っているからだ。しかし、この本を見たときに、「う~ん」と思ってしまった。

「う~ん」の意味はここでは書かないが、この本で取り上げられている例は、すべてこんな感じで極めてパワフルだ。

1章では、読み手に分かり易い図をテーマに、基本を事細かく、解説している。こんな感じだ。

・図表の作成手順
・数字の表し方
・データの完全性
・データの量
・フォントの選び方
・ビジュアルデータ表現
・色の使い方

2章は、データを正しく表現する図表のつくり方がテーマ。

・線グラフのつくり方
・縦棒グラフのつくり方
・横棒グラフのつくり方
・円グラフのつくり方
・表のつくり方
・ピクトグラムのつくり方
・地図グラフのつくり方

3章は少し、レベルが上がり、統計とマーケティングで使う図表。基本的なことから解説し、図式表現に到着するまで面倒を見てくれる。

さらに4章では、図解をしようと思ったときに、困ることを取り上げ、その対策を説明している。

特に大きな会社に勤めていると、この手の話は教えてもらえる機会がある。なので、知ってると思う人も多いと思う。特に、コンサルタントだと手慣れたものだ。

と思って読みだしたのだが、結構、勉強になった。特に4章が勉強になったが、それ以外のところも改めて勉強になると思った。

ここ数年「図解」ブームである。図解というのは普遍性のある作法があるように思っている人が多いが、実は流行りがある。嘘だろうと思うなら、サーバーを探して5年前に作ったプレゼン資料を引っ張りだして見てほしい。きっと古臭いを思うと思う。

たとえば、円グラフの書き方で多くの人がやっている手法に、「特殊効果は逆効果」という指摘である(P76)。円グラフで強調したいセグメントを色を濃くした上で、切り離すという表現だ。これなどは、流行りに過ぎない。

あまりウォールストリート・ジャーナルは読まないので、これが著者のノウハウなのか、ウォールストリート・ジャーナルという雑誌の特性なのかわからないが、とにかく、この本では基本的なことしか言っておらず、これだけを頭に叩き込んで、流行りのハウツー本に感化されて余計なデコレーションことをすべきではないといえる内容だ。

この本が売れまくっているのは、ということを分かっている人が多いのだろう。グラフィックエディターの基本を身につけておきたいと思う人は、必読の一冊。

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