個人と組織のGDT
デビッド・アレン(田口 元監訳)「ひとつ上のGTD ストレスフリーの整理術 実践編 仕事というゲームと人生というビジネスに勝利する方法」、二見書房(2010)
お奨め度:★★★★★
2001年に邦訳されたデビット・アレン氏のGTDの実践編。
デビッド・アレン(森平慶司訳)「仕事を成し遂げる技術―ストレスなく生産性を発揮する方法」、はまの出版(2001)
こちらは、仕事のハウツー本的なイメージだったが、本書は、前書で述べられていたことを整理、改善し、GTDとして体系的な方法論にした印象のある一冊。また、経験に基づいて、理論も強化されており、納得性も高くなっている。
GTDは非常にシンプルで、かつ、強力なツールであるが、組織で仕事をする、社会で生活するという場合、自分だけの都合だけでは動けないことが多い。本書は、アレン氏のGTDのコンサルティング、特に、企業の役員レベルの人のコンサルティングの結果を踏まえているようで、個人の仕事や活動をスムーズに前提と調和できるような工夫が凝らされている。その意味で、実践的な手法になっている。
まず、最初にGTDに3つのモデルを定義している。
(1)ワークフローのマスター
(2)ナチュラルプラニング
(3)6つのレベルで優先順位
まず、状況をコントロールするワークフローだが、ワークフローを効率的に作るためには、
1.収集:自分のところにやってくるあらゆるものを把握する
2.見極め:それぞれについて適切な判断を下す
3.整理:判断結果を適切なカテゴリーに分類する
4.見直し:必要に応じて全体や一部を評価する
5.取り組み:どうするかについて選択をする
の5ステップが必要だとしている。次に、プラニングでは、ワークフローモデルで視野に入りながらも直接対応できなかった「プロジェクトの管理」について対応するために
・目的と価値感を見極める
・結果をイメージする
・ブレーンストーミングをする
・思考を整理する
・次に取るべき行動を判断する
の5つのステップで自然に進行させる(「仕事を成し遂げる技術」の3章に詳細がある)。また、優先順位と見通しをつけるための6つのレベルは
・目的と価値間
・構想(ビジョン)
・目標
・責任を負っている分野
・プロジェクト
・行動
である。実際に起こす行動がもっとも上のレベルと密接につながっていればいるほど、その行動の優先順位は高くなる。
このようなモデルを導入することによって、「状況のコントロール」と「将来的な見通し」の2つの改善をすることによって、生産性を高めるというのが基本である。
さて、GDTの基礎になっている考え方は
・集中=力
・気がそれる原因の排除=集中
・やるべきことの管理不足=気がそがれる原因
・心はやるべきことを効果的に管理できない
・よりよいシステムに預けないと、気になることは消えない
・自分との約束を果たせていないプレッシャーからの解放
・結論を出す
・何より大切なのは見通しを持つこと
というものである。また、GDTが解決できる問題は個人レベルでは
・ストレスを軽くする
・ものごとがぐずぐずと進まない状況を何とかする
・エネルギーがやモチベーションを高める
・集中力を高める
・抱えているプロジェクトをうまく管理する
・もっと自分の創造性を引き出して活用したい
・もっと自由に活動したい
などであり、組織レベルでは
・生産性の向上
・コミュニケーションの改善
・ストレスの軽減
・ワークライフバランス
・実行力の強化
・優先順位の明確化
・時間管理
・革新力と創造性の向上
である。
「状況のコントロール」と「将来的な見通し」を改善するために、自己管理のマトリクスを考え、自分の状況を知る。その上で、ステップをワークフローをつくって行くとよい。
まず、収集のツールであるが、
・心のお掃除(気になることを話合う)
・日記
・ブレーンストーミング
・グループでの収集
・収集の習慣化
・予定外のことから身を守る
などについて説明している。次に、見極めについては、収集したものを空にするコツを述べた上で、
・行動を起こすべきことと結果の見極め
・現実に即した次に取るべき行動の見極め
・行動を起こす必要のないことの見極め
を行う。
次に整理である。整理されている状態とは、それぞれが意味しているものとそれが置かれている場所に違和感がない状態である。そのために、必ず整理する前に意味を明らかにする必要がある。
意味は最終的にはカテゴリーによって表現される。整理のカテゴリーには
・望むべき結果
・行動
・保留
・ゴミ
・参考資料
・プロジェクトの参考情報
がある。
次に見直しであるが、見直しには2つの目的がある。
・それぞれの項目を最新にする
・事態をきちんと見通せていると確信できるようにする
状況のコントロールの最後は取り組みである。すなわち、次に取るべき行動を決める。行動は十分に具体的にされている必要があり、そのためには、
・最初にやるべきことがぱっと思い浮かぶ
・その行動をやっている様子が想像できる
・どこでそれが行われているかを想像できる
の3つの条件をクリアできなくてはならない。行動がきまったら、考慮すべき要因がある。それは、行動の優先順の根拠になる「実行の要因」で
・戦略的要因
・制約的要因
・行動の種類
の3つがある。
もう一つは、将来への見通しについてである。将来への見通しは上に述べた6つのレベルで行う必要がある。本書ではそれぞれについて、
・スコープ
・管理の方法
・いつ、どのように取り組むか
を議論している。
改善されたGTDの概要は以上である。本の中では、これらを
グレイシーズガーデン
という物語を使って説明しており、この物語を読むだけでおおむね、把握ができるように工夫されている。
この実践編は、プロジェクト管理の方法として相当進化しており、この枠組みだけで、イノベーティブなプロジェクトは管理できるのではないかと思われる。また、マネジャーが使うマネジメントツールとしても耐えられるのではないかと思われるくらい、進化したものになっている。
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