プロフェッショナルマインドをビジネスマンに!
額宮良紀、 鈴木憲「揺るがない人のマインドビルディング ― 異分野のプロに学ぶ仕事のヒント83」、 英治出版(2009)
お奨め度:★★★★★
極限状態でベストな判断を下す最前線のプロフェッショナルのマインドを、いろいろなビジネスの場で役立てようという一冊。
戦闘機 パイロット、消防隊 隊長、国際線旅客機 機長、ハリウッド映画俳優、人質交渉人、外務省外交官、プロマジシャン、プロ棋士(将棋/囲碁)、脳神経外科医、武道家(合気道)、レストラン料理長、米国海兵隊隊員、旅客機CA(キャビンアテンダント)、JR運転士、警察本部長、などのプロフェッショナルの言葉から83を選んでいる。
83のマインドは、以下の13のカテゴリに整理されている。
・いま何が起こっているのかを素早く知る「状況把握」
・錯綜する混乱下での「情報収集」
・鮮明なイメージに基づく「分析と計画」
・不確実な状況での孤独な「意思決定」
・チームの心をつかんで離さない「リーダーシップ」
・敵対する相手と友達になる「交渉術」
・自分を守り人を危険にさらさない「リスク管理」
・信頼で結ばれた心のチームを築く「スタッフ管理」
・お客様を最高の気分にさせる「サービス管理」
・難しい状況でも必ず成し遂げる「目標達成法」
・誰よりも早く最高の技能を身に付ける「スキル向上法」
・実戦で使えるプロに育てる「育成法」
・自分を知り必ずやり遂げる「プロフェッショナルの責任」「交渉術」
たとえば、『不確実な状況での孤独な「意思決定」』のカテゴリーであれば、
・事前に決める判断基準
・予想外の事態と判断
・経験に基づく直感
・リスクを承知で決断するとき
・多数決の危険性
・過酷なプレッシャーに打ち勝つ「飛ばない決断」
といったテーマのマインドが並ぶ。基本的にはこのテーマを著者が2~4ページの解説しているというスタイルをとっている。
宣伝くさくなって恐縮だが、僕は有料で「PM養成マガジンプロフェッショナル」というメールマガジンを配信している。
適当な期間でフェーズをわけ、異なる企画で情報を提供している。現在、第4期で、今、やっているのが、PMサプリという企画だ。月4回で、もう212回やっているので、4年以上やっていることになるが、今までやった企画の中ではもっとも評判がよく、長寿企画になった。PMサプリもこの本と同じスタイルで、プロフェッショナルの言葉を引用し、その言葉をプロジェクトマネジメントを意識した解説をしていく。着目しているのはマインド・ビルディングだけではなくコンピテンシーであるが、まあ、似たようなものだ。
実はこの企画をやるきっかけになったのが、この本でもフレーズが取り上げられてる
坂井優基「パイロットが空から学んだ一番大切なこと」、インデックス・コミュニケーションズ(2005)
をメルマガの読者に紹介したことだ。この本を紹介したところ、たいへんな反響があった。読者の声はもちろん、セミナーに来られた方からしょっちゅう、坂井さんの本を読みました、よかったですということをいわれた。もちろん、この本だけを紹介しているわけではない中で、突出して反応が多かったのだ。
興味深かったので、なぜ、反応してくれた人みんなに、共感するのですかと聞いた。多かった意見は、パイロットという仕事と、プロジェクトマネジャーという仕事は、一見関係のない仕事であるようで、コンピテンシーやマインドという点では非常に共通部分が多いからだということ。そんな中で、「プロフェッショナルにはプロフェッショナルにしか共感できないものがある。その部分で共感しているんだ」といった人がいた。
なるほどと思って、僕もプロフェッショナルの言葉を使って、プロフェッショナルなプロジェクトマネジャーのマインドや行動を伝えていく企画をやろうと思って始めたのが、PMサプリだったというわけだ。
この本を読んでいて、改めてそれを痛感した。プロフェッショナルの言葉には、心に刺さり、人をその気にさせるリアリティがある。本でも刺さると、下手な研修で仕込まれるよりは、遥かに強い。これがこの本の本質だろう。
ただ、こういう手法のもう一つの本質は、上に照会したプロフェッショナルであるから、他のプロフェッショナルのマインドを感じ取れるという部分だろう。それでは、プロフェッショナルしか喜ばない本になる、あるいは、プロフェッショナルとそうでない人で、価値に差がある本になるが、この本は解説がうまく、その橋渡しを見事にしている。その分野の常識をみごとにベストプラクティスにしている。これがこの本の価値だろう。
僕も、まだ、PMサプリを書いていく予定だが、PMサプリを書くに当たっても大変、参考になった。
なんの紹介だか分からなくなってきたが、そういうことなので、とりあえず、買って、時間があれば1編ずつ読むという使い方をお奨めしたい。
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