課長の知るべき原理原則
濱田 秀彦「一冊ですべてわかる 課長のキホン」、河出書房新社(2010)
お奨め度:★★★★★
今月3冊目の課長本の紹介。この本が出たら、もう課長本は出しにくいのではないかと思うくらい、良くできている。明日、課長に昇進する人は、今日の帰宅時に買って帰って読んでおこう!
とりあえず、すぐに読んでほしいのは、課長の喜びの下り。
・人間的な成長
・経営感覚
・人脈
・DNAを残す
の4つだと指摘されている。
さて、この本、何がよくできているかというと、原理原則をきちんと踏まえ、本全体が非常によく整理されて書かれていることだ。課長の役割や仕事は多様である。会社によって違うし、個人によって違うといってもよいと思う。
ただし、原理原則がないわけではない。
まず、課長は大きく分けると2つのタイプがある。一つは、事業を行う課を預かる課長。もう一つは、機能を果たす課を預かる課長。前者の代表は○○営業課長、後者の代表は○○技術課長である。前者の場合、稼ぐことが求められる。後者の場合、組織を管理し、求められる成果を上げることを求められる。
一見、違うようだが、原理原則は同じだ。この本では、課長の役割は
預かった経営資源を活用して、成果を上げ続けるとともに、経営資源を強化する
ことである。これを一段落として考えると、上の2つのタイプでは役割は多少異なる。営業課長であれば、
与えられた人を活用して、経営から課された売上げ目標を達成し続ける。その活動を通じて、顧客や市場の確保、ブランドの構築を行い、同時に優れた営業マンの育成をする
となることが多い。技術課長であれば
与えられた人とカネを活用して、事業部門から求められた技術を開発する。その活動を通じて、技術的知見の蓄積を行い、同時に優れた技術者を育成する
となることが多い。
この本は上のように課長の役割の原則を明確にし、その原理原則を実現するための
・チームの動かし方
・仕事の管理
・人の管理
の3つを明確にしている。
まず、チームの動かし方では、
・方針を作ること
・個人、課、上位組織、会社の目標が連鎖していること
をキホンとし、これに対して起こりうるさまざまな問題を取り上げ、その問題に対して、どのように対処するかを極めて具体的に説明している。
仕事の管理では、
・仕事の優先順位の付け方(重要性と緊急性)
・指示の仕方
・リスク管理と問題解決。
をキホンとして、ここでも、起こりうる問題を取り上げ、その解決方法を具体的に説いている。
さらに、人の管理では、
・部下の管理
・動機づけ
・育成
・リテンションや移動
の4つのポイントについてキホンを説明し、問題が起こったときの対処方を示している。また、年上の部下、異性、問題社員など、部下のタイプを分けて、タイプ別に対応の留意点を挙げている。
最後に、課長の一日の仕事の流れをシミュレーションし、日常業務のポイントについて解説している。
内容のすばらしさだけではなく、ベテランの研修講師らしく、説明が完結で、わかりやすい。また、ポイントになる点が明確である。その点で、読みやすさ、わかりやすさという点でも文句なしである。
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