課長の本質を説く本
吉江 勝「あたりまえだけどなかなかできない 課長のルール」、明日香出版社(2010)
お奨め度:★★★★1/2
お馴染み、明日香出版の「ルール」シリーズの課長編。課長としてやっていくために必要なスキルを101のルールにまとめている。非常に具体的なルールから、かなりコンセプチャルなルールまで、混ざっている。このこと、自体が課長という仕事の本質を語っているのではないかと思う。
酒井穣「はじめての課長の教科書」、ディスカヴァー・トゥエンティワン(2008)
以来、多くの課長の本がでているが、ちょっと雰囲気が違うのは、課長になる前の人よりは、課長に読んでほしい本である。
この本では、課長のスキルを
・課長の心構え
・課長のマネジメント力
・課長の指導力
・課長の処世術
・課長のリスクマネジメント
・課長の総合力
・課長の本質
の7つのカテゴリーに分け、仕事術から、内省の方法までコンパクトなルールにまとめている。
多くの指摘は、そんなに特別なものではないように感じるが、すばらしいのは、ルール1で課長の一般的な役割を述べたあとのルール2
課長の役割は変化できること
というルール。そこには
組織の課題や問題点次第で、臨機応変に、課長しての役割の「発揮の仕方」を変えていくことができる。これが課長にとって最も大事な役割だと言えます
と述べられている。また、そのあとに
会社をよりよい方向に導くために主体性を持って変化する、こんなイメージで課長職に着手するとやりやすくなる
と指摘している点だ。そして、これに関連して、本質のルールの中に
なんのための行動かを自問する習慣をつけよう(ルール93)
というルールがある。リフレクションのルールであるし、欧米の企業との課長の違いはこの点であるし、課長に必要なコンセプチャルスキルは、この一点に集約されると言っても過言ではないだろう。
課長の役割の認識は人によって異なる。同じ組織でも異なる。しかし、現実には多くの課長は、何をすればよいかに戸惑っている。「マニュアル」がほしいということを平然と言ってのける課長も決して珍しくはない。
一言でいえば、主体的に行動して、リフレクションし、次のアクションに結びつけていくこと、言い換えると、アクションラーニングこそが課長の役割である。そして、その役割を遂行していくために、仕事をする。どんな仕事をしなくてはならないかは、組織の課題によって変わる。これがこの本の言っていること。
これこそが、今、すべての「現役」課長が認識すべきことだといえよう。
この本を読んで、改めて思うことは、「考えること」、「課題を設定すること」、「そして決断すること」、「学ぶこと」の4つが極めて重要である。こんな本を併せて読むといいだろう。
柴田 昌治「考え抜く社員を増やせ!―変化に追われるリーダーのための本」、日本経済新聞出版社(2009)
清水 久三子「プロの課題設定力」、東洋経済新報社(2009)44925
リクルートHCソリューションユニット 「 「決める」マネジメント――人を活かす職場をつくる」、英治出版(2009)
中原 淳、金井 壽宏「リフレクティブ・マネジャー 一流はつねに内省する」、光文社(2009)
書いていて気がついた。4冊とも昨年出版された本だ。やはり、時代が課長の活躍を求めているのだろう。
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