黒木亮の新作を読む【ほぼ日読書日記 2009年8月15日】
黒木亮氏の小説はほとんど読んでいるが、「カラ売り屋」の第二弾のこの小説は、別の意味で面白かった。
黒木 亮「リストラ屋」、講談社(2009)
アマゾンの書評を見ていると、あまりよい評価をされていないようだが、経済的な背景の深みはないが、主人公ではなく、リストラ屋の蛭田明の心理をうまく描いているのがたいへん、面白かった。
蛭田明は過程の事情で高専を出て、中堅メーカに就職する。そのメーカが買収されたのを契機に転職し、転職先の大手メーカで社長室長として経営再建を手がけ、その才覚を認められる。その後、独立し、流れの経営者としてコストカットを得意とする経営再建の手法でいくつもの実績を上げるが、その手法はコンプライアンスの問題がついて回るようなやり方。そして、ストックオプションを含み膨大な報酬。
そして小説の舞台となる極東スポーツの再建に失敗し、法的問題が表面化し、逮捕され、すべてを失う。そして、幼くして捨てら、別々に生きた母親が蛭田のためにこつこつと貯めて残した1千万あまりの貯金と、「経営者として成功し、人のために役立って欲しい」というメッセージだけが残る。
黒木 亮氏というと、代表作「巨大投資銀行」に代表される本格的経済小説だが、今年のお正月に「冬の喝采」を読んで少しイメージが変わった。意外と、カラ売り屋シリーズのようなテーストの小説に本領のある作家かもしれない。
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