行動を変えるにはスキルより自信が大切
ジョン・カウント(黒川敬子)「100のノウハウよりただ一つの自信 ゆるぎない「自分」をつくる77の心理技術」、ナナ・コーポレート・コミュニケーション(2008)
お奨め度:★★★★★
本屋にいけば、所狭しと積まれている啓蒙書。平積みされている本には○万部突破とかポップがついている、いわゆるベストセラーも少なくない。なぜ、こんなに売れるのだろうか?この本を読んでいるうちになるほどと思った。
この本のタイトルは100のノウハウよりひとつの自信。
マーケティングやプロジェクトマネジメントのような専門書の購入動機と、啓蒙書の購入動機というのはおそらく違う。専門書は純粋に知識を得ることを期待して購入する。これに対して、啓蒙書というのは行動を変えたくて購入されることが多い。
この本は、いくらそのようなスキルを得ても、行動は変わらないと主張する。そういれわれると、次から次へ出てくる啓蒙書を買い求める人がいるというのは納得である。何か本を読んでもなかなか行動は変わらないでので、次の本を買うということなのだろう。
この本によると、行動を変える方法はひとつ。「自信」を得ることである。なかなか、説得力のある話だ。自分の周囲を見渡してみても、啓蒙書を書くような人は、自信のある人が多い。したがって、そこに書かれていることは、自信がある人がそのノウハウを得て、それを実践することを前提に書かれている。ここでいう自信とは、単にそのようなノウハウがあるというような自信ではない。この本にあるように、キャリアや人生も含めたトータルな意味での自信である。勝ち組とまではいわないが、苦労しながらも順調なキャリアを歩んでいる人であることは間違いないだろう。
そのような本に書かれている内容を、自信をもてない人がいくら読んで、実践しようとしても実践できるものではない。これが啓蒙書ビジネスが永久機関のようなビジネスモデルになっている理由だと言ってもよいだろう。
少し、脱線するが、われわれが提供しているいろいろな職種のコンピテンシーモデルには、どの職種でも必ず、「自信」というコンピテンシーを入れている。いろいろな背景があるのだが、能力育成という点でいえば、自信というコンピテンシーを持つ人は、人に相談するとか、あるいは、人の行動を見ていてよい部分だけを学び取れる、そして、学んだことを実践に移し、フィードバックからもいろいろと学ぶことができる、学習能力が高い人だ。
自信がないと、学んだことが実践できない。実践できないと次のステップにいけない。結局、最初の学習(たとえば、本を読む)という段階で、うろうろしていて、目新しいものが見つかれば飛びつく、この繰り返しだ。継続できない人のダイエットみたいなものだ。
さて、では、どうすれば自信を持つことができるか?この本のベースは「自分の人生をきちんとコントロールできること」である。自分のベースがふらふらしているのに、自信を持って行動するというのはできない。ベースとは当然、人生である。そこまでいうと違和感がある人はキャリアと読み替えてもいいだろう。
ただし、この本で進めている方法は、すべてを計画的にカチッとやれというようなものではない。要所要所を押さえていけば、自分の人生のコントロールができるという考え方をしている。これは共感できる。
その上で、
・自分の価値を肯定する
・決してぶれない信念を持つ
・目標を着実に達成する
・ものごとをポジティブに考える
・きちんと自己主張をする
・失敗に冷静に対処する
の6つの行動をできるようになることで、自信を持つことができるとし、その方法を具体的に示している。
この話の怖いところは、この6つの行動にバランスよく取り組まないと、とんでもない空回り、勘違いになってしまうことだと思うので、この7つはセットのソリューションであることに気をつけ、実践していくことによって、自信をつけることができるというのは共感できる本である。
【目次】
はじめに
■プロローグ なぜ、あなたは自信がないのか?
何が自信をなくしているのか?
「~なら自信が持てるのに」がダメな理由
自信を持てる〈条件〉を取り除く
能力と自信は関係しない
自分はダメだと感じたときに自信をつける方法
■第1の力 自分の人生を自分でコントロールする力
心の〈重荷〉を捨てる方法
他人に頼らないようにする方法
他人との比較は不幸をもたらす
■第2の力 自分の価値を肯定する力
自分の長所はどう認めればいいのか
心のよりどころとなる「成果」を認める
自分を否定しない方法
自分自身に問いかけてみる
セルフトークをポジティブなものに変える
自己批判を口に出して言わないようにする
もっと自分自身と友達になる
自分を笑えるようになる
褒められたら素直に喜ぶ
過去の問題を蒸し返さない
完ぺき主義を克服する
完璧主義を克服する方法
ネガティブな人とは付き合わない
■第3の力 決してブレない信念の力
〈可能性をもたらす信念〉と〈制約する信念〉
ネガティブな信念はどう変えればいいのか?
ネガティブな信念を変える方法
ポジティブな信念はどうつくればいいのか?
ポジティブな信念をつくる方法
■第4の力 目標を着実に達成する力
目標を実現するための5つのポイント
自分の資質をさらに強化する
目標は他人と分かち合うべきか?
目標を達成して自信につなげる方法
目標達成を自信につなげる方法
■第5の力 ポジティブに考える力
実現できた自分を想像する「ビジュアライゼーション」
プラス志向を引き出す「アンカリング」
良い面だけにフォーカスする「リフレーミング」
防御せず力を抜いて「受け入れる」
自分を意識しない「デタッチメント」
簡単な瞑想の方法
■第6の力 きちんと自己主張する力
相手を尊重しながら言いたいことをはっきり言う
きちんと自己主張する方法
伝えたいセリフを事前に覚える
簡潔なメッセージを繰り返す「傷ついたレコード術」
言葉より効果を発揮する「ボディーランゲージ」
自信家の役を「演じる」
批判を反発せずに上手に「受け止める」
批判を受け止める方法
その場の状況をコントロールするには「認める」
受けた批判の種類に合わせて「応じる」
批判的な意見をあえて「他人に求める」
いじめには断固とした態度を貫く
いじめに対して自己主張する方法
■第7の力 失敗に冷静に対処する力
上手な不安の対処法とは?
不安に打ち勝つ方法
失敗への不安にはどう取り組めばいいのか?
失敗にはこうして対処しよう
失敗に対処する方法
間違いに対する不安にはどう取り組むか?
間違う不安の克服法
訳者あとがき
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