DIALOGで話せばわかる
中西 雅之「対話力―なぜ伝わらないのか、どうすれば伝わるのか」、PHP社(2008)
お薦め度:★★★1/2
この本の中核になっている仮説はコミュニケーションの問題は対話力不足にあるというもの。この仮説、みなさんはどう思われるだろうか?僕は今、もっとも必要なコミュニケーション能力だと思う。
歴史的にみて、対話は弁証法と深い関係にある。つまり、対話は対立する意見から、双方の納得する結論を導き出す行為(プロセス)である。対話がなければどうなるか?ひとつは妥協。三方一両損のような状態だ。あるいは、一方は満足するが、もう一方はまったく不満という勝ち負けがついた状態である。
対話はWinWinの状態を一緒に考えるプロセスである。この本では、まず、対話力不足を指摘した上で、対話を容易に行うステップを提案している。それは
(1)お互いの目的やゴールを見極める
(2)自分と相手の目的とゴールを一つにまとめて統合する
(3)どうすればその共通の目的やゴールを達成できるかを考え、可能な選択肢を見極める
(4)相手や状況に応じて、最適なオプションを選択し、実行に移す
の4ステップだ。このステップを意識すれば、かなり、うまくいくのではないかと思う。
さらに本書では、このような対話を進めていくためのDIALOGコンピテンシーに言及している。これが
D:認識力
I:想像的思考力
A:適応力
L:聞く力
O:注意力
G:一般的コミュニケーション能力
の6つである。そして、これらについてポイントになるところをかなり丁寧に解説している。ちなみに、本の冒頭にこれらの診断がついているので、読み始める前に、診断をしておき、自分の弱いところは丁寧に読んでいくとよいだろう。
さらには、非言語コミュニケーションやメタコミュニケーションにも言及しているが、このあたりはコミュニケーションスキルの問題であって、対話という問題とは少し離れているように感じる。ただし、DIALOGのGは一般的コミュニケーション能力なので、矛盾はしていないし、コミュニケーション方法論としては高度で、理解できれば間違いなく役だつ。
対話力の強化にとっておきの本を紹介しておく。平田オリザのエッセイ集
平田オリザ「対話のレッスン」、小学館(2001)
である。平田氏のウィットに富んだエッセイの中から、対話とは何か、どうすれば対話になるのかといった対話の本質を読み取ることができる。
【目次】
第1章 コミュニケーションの問題は「対話力」不足にある
第2章 「対話力」に必要なこと
第3章 「非言語コミュニケーション」と「メタコミュニケーション」
第4章 対話はドラマ
アンケート調査でわかる「対話のできない人たち」と「対話の極意」
コメント