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2007年3月21日 (水)

トヨタの秘密

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ジェームズ・モーガン (著), ジェフリー・ライカー(稲垣公夫訳)「トヨタ製品開発システム」、日経BP社(2007)

お奨め度:★★★★1/2

トヨタウエイの著者 ジェフリー・ライカーによるトヨタの製品開発システムのエスノグラフィ。日米の研究開発拠点12箇所で40人の開発担当者から延べ1000時間に及ぶ聞き取り調査を実施して書き上げた本。

トヨタウエイについてはこちらの記事を参照。

トヨタウエイの実践

トヨタといえば現場とよい意味で泥臭い改善活動の印象がつよい。しかし、マネジメントの研究者のレベルでは、むしろ、製品開発システムに関心が高かった。東京大学の藤本先生、神戸大学の延岡先生をはじめとし、多くの経営学の研究者がトヨタのシステムを研究し、論文を書いている。実際のところ、初代イプサムに代表されるリードタイムの大幅な短縮など、興味深い点は多い。

それらの本と比べるとこのライカーの本は実務者にとって参考になる。あまり、大きな仮説を設定せずに、エスノグラフィーとして淡々と調査、観察したことが書かれており、本当のところの実態がよくわかる。

チーフエンジニア制度、セットベースのコンカレント・エンジニアリング、平準化プロセスなど、トヨタ独自のシステムが丁寧に解説されているので、読んでいて、上記の論文ではわからないことがわかる部分がずいぶんある。特に興味深いのはこれらの制度の背景にあるルールを以下のような原則としてまとめていることである。

 プロセスのサブシステム:リーン製品開発システム原則の1~4
   原則1 付加価値とムダを分離できるように、顧客定義価値を設定する
   原則2 選択肢を十分に検討するため、製品開発プロセスを設計上の自由度が一番高い初期段階にフロントローディングする
   原則3 平準化された製品開発プロセスの流れをつくる
   原則4 厳格な標準化を使ってばらつきを減らし、フレキシビリティーと予測通りの結果を生む

 人のサブシステム:リーン製品開発原則の5~10
   原則5 開発を最初から最後までまとめるチーフエンジニア制度をつくる
   原則6 機能別専門能力と機能間統合をバランスさせる組織を採用する
   原則7 すべての技術者が突出した技術能力を持つようにする
   原則8 部品メーカーを完全に製品開発システムに組み込む
   原則9 学習と継続的改善を組み込む
   原則10 卓越性とあくなき改善を支援するカルチャーを醸成する

 ツールと技術のサブシステム:リーン製品開発システム原則の11~13
   原則11 技術を人やプロセスに適合させる
   原則12 組織全体の意識をシンプルで視覚的なコミュニケーションで合わせる
   原則13 標準化と組織的学習に強力なツールを使う

ただし、このようなトヨタ方式が有効かどうかを判断するのは読者である。これが有効であるという証拠、論拠はない。唯一あるのは、もうすぐ、世界一の自動車メーカになるだろうということだけだ。

逆にいえば、別の業界の人(たとえば、製薬)がベストプラクティスとして読んでも訳に立つ内容ではないかと思う。

それから、いくつかの開発ケースが採録されている。これらは読み物としても面白い。

目次

第1部 序論

第1章 新製品開発革命
第2章 リーン製品開発システムモデル

第2部 プロセスのサブシステム
第3章 付加価値とムダを分離できるように顧客定義価値を設定する
第4章 選択肢を十分に検討するため、製品開発プロセスをフロントローディングする
第5章 平準化された製品開発プロセスの流れを作る
第6章 厳格な標準化を使ってばらつきを減らし、フレキシビリティーと予測通りの結果を生む

第3部 人のサブシステム
第7章 開発を最初から最後までリードするチーフエンジニア制度を作る
第8章 機能別専門能力と機能間統合をバランスさせる組織を採用する
第9章 すべての技術者が突出した技能能力を持つようにする
第10章 部品メーカーを完全に製品開発システムに組み込む
第11章 学習と継続的改善を組み込む
第12章 卓越性とあくなき改善を支援するカルチャーを醸成する

第4部 ツールと技術のサブシステム
第13章 技術を人やプロセスに適合させる
第14章 組織全体の意識をシンプルで視覚的なコミュニケーションで合わせる
第15章 標準化と組織的学習に強力なツールを使う
第16章 首尾一貫したシステム:すべての要素を組み合わせる
第17章 製品開発の価値の流れのムダを排除する
第18章 カルチャーを変える:リーン製品開発の核心
付録 価値の流れ図を製品開発プロセスに使う:ピープルフローマニュファクチャリング社の事例  ジョン・ドロンゴス博士

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