死の谷を如何に乗り越えるか
榊原清則「イノベーションの収益化―技術経営の課題と分析」、有斐閣(2006)
お奨め度:★★★★
R&Dにおける「死の谷」問題に着目し、実際の日本企業のサーベイを通じて、この問題への解決の方向性を提案している。提案は、クリステンセン先生の『イノベーションのジレンマ」や、東大藤本先生の『アーキテクチャの位置取り戦略』をベースの理論としており、これらに対する簡単な解説も含まれている。
理論的な解説をこの問題に絞っているので、MOT全般を扱う本にはなっていないが、簡潔に、実に的を得た実感を持てる問題分析と提案になっている。
また、この本の三分の二を占める内外のベストプラクティスを分析する形で、提言が構成されているので、納得性も高く、読んで面白い本である。
MOTのとってつけたようなケースではなく、このように本格的なケースを踏まえて、論理構成をする榊原先生のセンスには感動すら覚える。
目次
オーバービュー:問題意識と本書の概要
第1部 日本企業の技術経営課題(研究開発の効率低下
イノベーション課題の変化
技術戦略と研究開発マネジメント)
第2部 ベストプラクティス事例(キヤノンの事例
インテルの事例)
第3部 イノベーションの収益化:課題とその克服(寿命の長さとそのビジネス上の意味
総合型企業のジレンマ:日本時計産業の成功と蹉跌)
未来を切り拓く
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