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2006年8月

2006年8月 5日 (土)

プロジェクトマネジメント危機脱出マニュアル

447837521601 デイビッド・ニクソン、スージー・シドンズ(中嶋秀隆訳)「プロジェクト・マネジメント 危機からの脱出マニュアル―失敗ケースで学ぶ」、ダイヤモンド社(2006)

お奨め度:★★★★1/2

さっと読んでみて、いよいよ、こんな本が出てくるようになったかという思いを持った一冊。さすが、PMに対する独自の視点と見識をもたれる中嶋秀隆さんが選んで翻訳された本という感じ。

プロジェクトの失敗をきちんと体系的に整理し、問題領域を特定し、問題領域に対してソリューションを提供している。同じ狙いで書かれた本に、伊藤健太郎さんのベストセラー

伊藤健太郎:「プロジェクトはなぜ失敗するのか―知っておきたいITプロジェクト成功の鍵

https://mat.lekumo.biz/books/2005/01/it.html

がある。この本は今でも一番売れたPM本らしい。

伊藤さんの本はプロジェクトマネジャー向けに書かれているのに対して、この本は、組織マネジャー、あるいはプログラムマネジャー向けに書かれた本である。プロジェクトマネジャーに役に立たないという意味ではないが、ソリューションがプロジェクトマネジャー一人では実行できないようなものがかなり入っているし、問題分析の視点も組織からの視点である。また、人事制度とのプロジェクト失敗の関係、PR(パブリックリレーション)との関係にまで言及されており、広範な内容をコンパクトに纏めた非常に参考になる本である。

特にプログラムマネジャーにお奨めしたい本だ。ただし、2つ注意がある。マニュアルと書かれているが、コンパクトに纏めるためか、記述の抽象度が高い。原書を読んでないのでなんともいえないが、訳は読みやすいと思うので、原書の書き方の問題だと思う。2つめは、これにもつながるが、相当、マネジメントに関する基本的な知識を持たないと読みこなせない本である。これはプロジェクトマネジャーより組織マネジャーを対象にした本だからだと思う。

久しぶりに★5つをつけようと思いとどまった。理由はエンパワーメントとガバナンスに関する踏み込んだ議論がないことだ。これらの問題に触れてないわけではなく、いろいろな側面から触れている。また、このような構成になる理由も分かる。しかし、これだけ工夫された本であるので、もう少し頑張って欲しかったなと思う。そこだけが、若干、不満であるが、それ以外、文句なし。

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2006年8月 3日 (木)

非連続思考法

447849051101 リュック・ド・ブラバンデール(森澤篤監訳、秋葉洋子訳)「BCG流 非連続思考法 アイデアがひらめく脳の運転技術」、ダイヤモンド社(2006)

お奨め度:★★★1/2

思い込みで失敗することは多い。これを防ぐには論理思考が有効だといわれている。しかし、もう少し、メタに考えると論理思考も思い込みである種の思い込みであることが、この本を読むと良く分かる。

物事を変えたいときは、ものの見方を変えると有効であるが、この本では、BCG流の具体的な方法や視点設定について説明している。

非連続思考法の象徴的な例として、南アフリカ共和国でアパルトヘイト(人種隔離政策)が廃止されたときに、住民のほとんどが思いついたシナリオは

 ・恩赦を与える

 ・すべてを裁判にかける

の2つしか思いつかなかった。前者は受け入れられない。後者は現実的にできない。これに対して、指導者が第3のアイディアとして

 ・許す

という発想をしたというエピソードが書かれている。とくに、二者選択の状況では、視点が狭まり、このような発想をするのは難しいものだ。このような発想がピンチを救うことは非常に多い。

コンサルタントとして活動するとき、あるいは、マネジャーとして率いるチームが停滞しているときには、ぜひ、この非連続思考法を活用したい。

447849022809この本は非連続思考について書かれた本だが、そのベースには一通りのオーソドックスな問題解決思考法がある。その解説が若干分かりにくいので、本格的にマスターしなたいなら、併せて、例えば、

齋藤嘉則「問題解決プロフェッショナル「思考と技術」」、ダイヤモンド社(1997) 

といった本と併せて読むことをお奨めしたい。

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