プロジェクトマネジメント定番テキスト
ハロルド・カーズナー(伊藤健太郎訳)「戦略的エンタープライズ・プロジェクトマネジメント」、生産性出版(2005)
お奨め度:★★★★
組織がプロジェクトをより成功させていくためにどのようにプロジェクトマネジメントを導入、活用していくのがいいのかを、3M、サンマイクロシステムズ、ヒューレットパッカード等のベストプラクティスとケーススタディを通して示している。米国では、大学院におけるプロジェクトマネジメントのテキストとして広く活用されている著名な書籍。
ちなみにと取り上げられているケーススタディは
Clark Faucet社
非協力的な文化の中でプロジェクトを実施する上での問題提示
Photolite社(A)
プロジェクトマネジャーがメンバーの選定を行う上で考慮する事項の検討
Photolite社(B)
ライン業務とプロジェクト業務を行う従業員の評価についての検討
Photolite社(C)
プロジェクトマネジメント組織で働く従業員を公平に評価する方法についての検討
Photolite社(D)
マトリックス型組織における新評価方法についての検討
Continental Computer社
事業部横断的なプロジェクトマネジメントのキャリアパスの検討
Goshe社
新事業部の格上げでの問題点を多角的に検討
Hyten社
公式のプロジェクトマネジメントの導入に関する検討
であり、テーマを見ても、非常にポイントをついていることがわかる。
問題は価格。なんとこの本、21000円する。高いなあ~と思う人は、とりあえず、原書という手もある。もっとも、こちらも10000円するが、、、
「Advanced Project Management: Best Practices on Implementation」、John Wiley & Sons Inc(2004)
この本はすばらしいと思う。いちゃもんをつけるわけではないということをお断りした上で、一つ、面白い話を紹介したい。
いろいろと差し障りもあると思うので、名前は伏せるが、昔、DECにいて、今は、HPでプロジェクトマネジメントのミッションについている人が、この本でもベストプラクティスとして取り上げられているヒューレットパッカード(HP)について、今のHPのプロジェクトマネジメントはDECの作り上げたものが基盤になっているという話をされていたのを思い出した。真偽のほどははっきりしないが、この本に書かれているかなりの部分は、DECでは既に実現されていたようだ。
この様子は、DECの80年代について書かれたエスノグラフィーである
ギデオン・クンダ(金井壽宏監訳、樫村志保訳)「洗脳するマネジメント~企業文化を操作せよ」
を読んでみるとよくわかる。とても、面白いことだが、プロジェクトマネジメントも組織レベルで考えた場合、組織文化が重要なキーになる。ちなみに、ハロルド・カーズナーもこの点を強く主張している。
==========
人気ランキング投票! → クリック!
目次
1章 プロジェクトマネジメントの発展
2章 成功、成熟、エクセレンスの定義
3章 成熟に向けての推進力
4章 プロジェクトマネジメントの方法論
5章 プロジェクトマネジメントにおけるエクセレンスの戦略的計画
6章 モダン・プロジェクトマネジメントの成熟
7章 プロジェクト・ポートフォリオ・マネジメント
8章 プロジェクト・オフィス
9章 統合プロセス
10章 企業文化
11章 マネジメント・サポート
12章 トレーニングと教育
13章 非公式なプロジェクトマネジメント
14章 行動のエクセレンス
15章 プロジェクトマネジメントにおける合併と企業買収の効果
16章 成長する企業とその将来の方向性
付録A プロジェクトマネジメント成熟度アンケート
付録B プロジェクトマネジメントのエクセレンス評価
付録C ソフトウェア開発方法論
付録D Computer Associates社におけるベスト・プラクティス・ライブラリ開発
付録E Computer Associates社におけるポスト・プロジェクトアセスメント・プロセス
コメント