現場改革は難しい
黒瀬邦夫(野中郁次郎監修)「富士通の知的「現場」改革」、ダイヤモンド社(2005)
お奨め度:★★★
野中先生の提唱されるナレッジマネジメントは、現場の改革が必要である。最近、「現場力」というのが経営のキーワードになっている節がある。背景には、「組織学習」があるようだが、現場を変えるには気の遠くなるような時間が必要である。
米国でCMMレベル5に認定されているIT企業の役員が、CMMレベル5に認定されたが、まだ、現場が変わったとは思っていないといっていた。トヨタのような現場を作るには、まだまだ、継続的な取り組みが必要だとしみじみといっていた。そのくらい、現場を変えるには時間と根気に対するトップマネジメントのコミットメントが必要である。
この本は富士通が10年近く取り組んでいるナレッジマネジメントによる現場変革の活動を紹介した本である。トップが十分に野中流のナレッジマネジメントを理解し、根気よく取り組んでいる様子がよくわかる。
ただ、読み進むうちに、これだけの時間をかけて、ここまでしか到達しないのかという思いが強くなった。富士通の取り組みがまずいということではなく、これが上に述べた難しさであろう。自分の中堅企業のコンサルタントとしての経験に照らし合わせると、これだけの大きな企業が10年でこれだけ変わったと見るべきかもしれないという感もある。
現場改革の難しさを知る上では、非常に参考になる1冊である。ただし、かなり、広報的な書き方をし、生々しさを除いてあるので、その辺りは想像しながら読む必要がある。
コメント